東北労災病院勤労者予防医療センターの宗像正徳氏

 血管硬化指標の1つである上腕‐足首脈波伝播速度brachial‐ankle pulse wave velocitybaPWV)は、未治療の本態性高血圧患者において脳心血管疾患発症の予測能を有する可能性が報告された。全国の54施設が参加したコホート研究であるJ‐TOPPJapanese Trial On Prognostic Implication of PWV)の成果で、東北労災病院(仙台市)勤労者予防医療センターの宗像正徳氏らが、10月22日まで宇都宮で開催されていた日本高血圧学会(JSH2011)で発表した。

 対象は未治療の本態性高血圧患者で、2002年4月から2004年12月までに718人が登録された。降圧治療は、ARB、ACE阻害薬、Ca拮抗薬のいずれかで開始し、降圧不十分であれば、第2選択薬として利尿薬あるいは交感神経系抑制薬の追加、さらに第3選択薬として主治医が必要と判断した降圧薬の追加を認めた。糖尿病や脂質異常症の治療については、それぞれのガイドラインに沿った治療を行った。

 登録された718人のうち、予後に関するデータが1回以上得られた662人で解析を行った。この662人の登録時におけるbaPWVの中央値であった1750cm/秒を基準に、baPWV高値群(325人)と同低値群(337人)の2群に分けた。両群の平均baPWVはそれぞれ2065cm/秒、1532cm/秒だった。

 患者背景を比較すると、baPWV高値群は低値群に比べ有意に高齢で(64.9歳対54.7歳、P<0.0001)、BMIが有意に低かった(24.0kg/m2対24.8 kg/m2、P<0.01)。また、血圧、脈拍、空腹時血糖、クレアチニンについては、高値群の方が有意に高かった(順にP<0.0001、P<0.0001、P<0.0001、P<0.01)。一方、男性比率、総コレステロール、HDLコレステロール、トリグリセリド、喫煙率、レニン・アンジオテンシン系阻害薬の使用は、両群に有意差は見られなかった。

 追跡期間は平均3年(範囲:3カ月〜8年)で、この間に24例の致死性・非致死性の脳心血管イベント発生が報告された。内訳は、脳梗塞8例(死亡1例)、脳出血2例(死亡1例)、くも膜下出血1例、心筋梗塞3例(死亡1例)、狭心症9例、腹部大動脈瘤1例だった。

 脳心血管イベント無発生率をKaplan-Meier曲線で比較すると、baPWV高値群の方が有意に低かった(P=0.01)。なお、1000人年当たりの脳心血管イベントイベント発生率は高値群が17.48、低値群が6.38で、高値群が有意に高かった(P<0.05)。また、8年間の脳心血管イベント無発生率は順に78.2%、93.5%で、有意差が認められた(P=0.01)。

 Cox比例ハザードモデルで、年齢、性、BMI、喫煙の有無、空腹時血糖、クレアチニン、収縮期血圧、脈拍、総コレステロール、レニン・アンジオテンシン系阻害薬の使用で補正したbaPWV高値群の低値群に対するハザード比を算出すると2.97(95%信頼区間:1.006‐9.380)であった。

 これらの結果から宗像氏は、「baPWVは、本態性高血圧患者において、心血管イベント発症の独立した予測因子である可能性がある」と結論した。

(日経メディカル別冊編集)