東北大学大学院臨床薬学分野の松本章裕氏

 高血圧認知機能低下の危険因子とされるが、多くの研究では随時血圧が用いられている。そこで、随時血圧よりも再現性に優れ白衣効果がないとされる家庭血圧を用いて血圧と認知機能の関連を調べたところ、血圧日間変動の増大が認知機能の低下と有意な関連を示すことが分かった。10月22日まで宇都宮で開催された日本高血圧学会(JSH2011)で、東北大学大学院臨床薬学分野の松本章裕氏らが発表した。

 対象は岩手県花巻市大迫町の高齢者健診の参加者で、認知機能低下、脳卒中既往などを除いた450人(平均年齢63.4歳、女性71.8%)。認知機能の評価はMMSEスコアで24点未満を「MMSE低下」とし、家庭血圧と追跡後(平均7.2年)のMMSE低下との関連を多重ロジスティック回帰分析により検討した。

 ベースラインの平均家庭血圧は、収縮期124.1mmHg、拡張期75.9 mmHg、平均血圧日間変動は収縮期8.7mmHg、拡張期 5.7mmHg、ベースラインのMMSE中央値は28点だった。

 追跡後に、MMSEが24点未満に低下したMMSE低下群は37人だった。これらのMMSE低下群とMMSE非低下群とを比較すると、ベースライン時の家庭血圧(収縮期/拡張期)はそれぞれ128.5/78.8mmHg、123.7/75.6mmHgで、MMSE低下群の家庭血圧は非低下群に比べ有意に高かった(t検定、P=0.053)。しかし交絡因子補正後は、家庭血圧とMMSE低下の関連は見られなかった(P≧0.6)。

 一方、MMSE低下群の血圧日間変動はMMSE非低下群に比べ有意に高値(収縮期:9.8mmHg対8.6mmHg、P=0.007、拡張期:6.4mmHg対5.6mmHg、P=0.021、いずれもt検定)で、交絡因子補正後も有意な関連が見られた。さらに収縮期血圧日間変動の1SD(2.5mmHg)に相当するMMSE低下の調整オッズ比も有意に高かった(1.6、P=0.03)。拡張期血圧日間変動においてもオッズ比1.4と同様の傾向を示した(P=0.06)。

 松本氏は、「血圧日間変動の増大は、交絡因子補正後もMMSE低下と関連が見られ、家庭血圧測定で血圧日間変動を捉えることで、認知機能低下を予測できる可能性が示唆された。これまでに得られている知見からも、血圧日間変動の増大が動脈硬化や自律神経障害の進展を介して認知機能低下に影響を及ぼしている可能性が考えられる」と話した。
  
(日経メディカル別冊編集)