徳島大学大学院生体情報内科学の吉田守美子氏

 青魚に多く含まれるエイコサペンタエン酸EPA)は冠動脈疾患予防に有用とされているが、機序の全てが明らかになっているわけではない。徳島大学大学院生体情報内科学の吉田守美子氏らは、EPAがレニン-アンジオテンシン系の活性化による心血管リモデリングを抑制すること、その作用が酸化ストレスの抑制を介したものであることを動物実験で明らかにした。研究成果は、10月20日から22日まで宇都宮で開催された日本高血圧学会(JSH2011)で報告された。

 今回の検討は、8週齢の雄性マウス(C57B6/J)を用いたもの。吉田氏らは、マウスにEPA非含有食または5%EPA含有食を与えて7日間飼育した後、オスモミニポンプを用いて1日当たり2mg/kgのアンジオテンシンII(AII)を14日間持続投与した。その後、各個体の血圧と血清脂質値、および心エコーと病理組織学的検査により、心血管系の形態的変化を比較した。

 試験の結果、AII負荷により、全てのマウスで血圧の上昇が認められたが、EPA食マウスでは非EPA食マウスに対し、収縮期血圧の上昇が有意に抑制されていた(P<0.05)。また、EPA食マウスでは、非EPA食マウスに対し、AII負荷の有無にかかわらず、総コレステロールと中性脂肪(TG)値が半分程度となっていた(共にP<0.01)。

 なお、EPA食マウスでは総コレステロールの低下とともにHDLコレステロール(HDL-C)も低下していたが、総コレステロールの低下はより大きく、「総コレステロール/HDL-C比という観点でみれば大きな問題ではないだろう」(吉田氏)と考えられた。

 非EPA食マウスでは、AII負荷により心エコー上、心肥大を示唆する所見が認められ、実際に心体重比も増加していた(P<0.01)。また、血管の肥厚や心筋、血管周囲の線維化も促進されていた(P<0.01)。しかしEPA食マウスでは、これらの現象がすべて有意に抑制されていた。

 次に吉田氏らは、サンプル中の活性酸素代謝物と抗酸化物質量から潜在的な抗酸化能を評価する市販の測定キットを用い、上記マウスの抗酸化能を測定した。その結果、潜在的な抗酸化能を示すとされるBAP/d-ROM比は、AII負荷によって、EPA食マウス、非EPA食マウス共に有意に低下したが(それぞれP<0.05、P<0.01)、AII負荷時のEPA食マウスでは非EPA食マウスに対して、この値が有意に高く(P<0.05)、EPAにより酸化ストレスが減弱されていると推測された。

 さらに、EPA食マウスの左室心筋と大動脈組織では、AII負荷に伴う活性酸素量の増加も抑制されていた(ともにP<0.05)。なお、活性酸素の主要な産生酵素であるNADPHオキシダーゼの活性は、AT1受容体刺激によって亢進することが明らかにされているが、EPA食マウスではAII負荷後もNADPHオキシダーゼ発現の増強は認められなかった。また、酸化ストレスによる傷害の指標である尿中8-OHdG量の増加も抑制されていた(P<0.05)。

 一連の結果から、高EPA食を給餌されたマウスではAIIによる心血管傷害的な作用に対する耐性が高まり、血圧上昇や脂質異常、心血管リモデリングなどが起こりにくいことが明らかになった。その機序としては、活性酸素産生の亢進抑制と抗酸化能の増強による酸化ストレス抑制が関与していることが示唆された。

 動物実験とはいえ、短期間のEPA投与で顕著な効果が得られたことは、ヒトにおけるEPAの有用性についても期待を抱かせる結果と言えそうだ。

(日経メディカル別冊編集)