久留米大学心臓・血管内科の甲斐久史氏

 冠血行再建術後の安定した冠動脈疾患CAD)患者において、拡張期血圧(DBP)が低いことは心血管死亡の独立した危険因子でないことが示された。これは、国内の医療機関が参加して行われたCREDO-Kyoto研究Coronary REvascularization Demonstrating Outcome study in Kyoto registry)のサブ解析により明らかになったもので、久留米大学心臓・血管内科の甲斐久史氏らが、10月20日から22日まで宇都宮で開幕中の日本高血圧学会(JSH2011)で発表した。

 DBP低値がCAD患者における心血管イベントを増加させるかについては、今も議論の対象となっている。そこで甲斐氏らは、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)あるいは冠動脈バイパス術(CABG)を受けた冠血行再建術後の安定した慢性CAD患者において、DBP低値が心血管イベント発症に及ぼす影響とその危険因子を検討した。

 CREDO-Kyoto研究に登録されたのは初回のPCIまたはCABGを受けたCAD患者9877人だったが、今回のサブ解析では、そのうち安定した慢性CAD患者7180人を検討対象とした(平均観察期間は3.6年)。患者背景をみると、年齢は67.0歳、BMIは23.8kg/m2、血圧は135.5/74.5mmHg、推算糸球体濾過量(eGFR)は70.0mg/分/1.73m2。主な合併症については、高血圧が69.8%、脂質異常症が52.2%、糖尿病が38.1%、既往歴については、心筋梗塞が19.9%、心不全が4.9%、脳血管障害が16.3%だった。

 Kaplan-Meier法で累積イベント発生率をみると、DBPが70mmHg未満の患者は同70mmHg以上の患者に比べ、全死亡、心血管死亡はともに有意に高かった(いずれもP<0.001)。一方、非致死性心筋梗塞や非致死性脳卒中は、いずれも両群間に有意差は認められなかった。

 DBP70mmHg未満の患者において多変量スワップワイズ・ロジスティック回帰解析を行ったところ、eGFR低値、脈圧増大、左室収縮能低下、心不全既往、脳血管障害既往、心筋梗塞既往が心血管死亡の独立した危険因子だった。これらの6つの危険因子に加え、年齢、性別で補正して心血管死亡の累積ハザード比を見ると、DBPが70mmHg未満とDBPが70mmHg以上の患者の間で有意差はなくなった。

 これらの結果から甲斐氏は、「冠血行再建術後のCAD患者において、独立した危険因子で補正すると、DBP低値は心血管死亡リスクではなかった」と結論した。また、DBPが低い冠血行再建術後のCAD患者では、慢性腎臓病、心機能低下、動脈硬化の管理に留意すべきだと指摘した。

(日経メディカル別冊編集)