和歌山県立医科大学の小池有美氏

 ハンドグリップによる運動負荷の前後に瞳孔機能検査を実施し、シルニジピンと他のCa拮抗薬が交感神経系に及ぼす影響を比較した結果、シルニジピンは他剤より血管の緊張抑制に優れている可能性が示された。和歌山県立医科大学の小池有美氏らの研究成果で、10月20日から宇都宮で開催中の日本高血圧学会で報告された。

 交感神経抑制作用を有するシルニジピンには、一般的なCa拮抗薬とは異なる臨床効果が存在する可能性がある。しかし、交感神経機能を簡便に評価できる手段は乏しく、交感神経系への影響を介した薬剤の効果を探るのは難しい。

 小池氏らは、運動負荷と瞳孔機能検査を組み合わせて実施した。ハンドグリップによる等尺性運動を行うと、わずか数分で心拍数上昇や呼吸の増加といった交感神経応答を引き起こすことが分かっている。また、交感神経活性が亢進すると散瞳の速度が増加するといった現象が起きるため、瞳孔機能検査によって変化を捉えることができる。

 対象は、シルニジピン服用中の高血圧患者19人(平均年齢68.7歳)とアムロジピンを服用中の高血圧患者18人(同67.9歳)とした。小池氏らは、これらの患者に握力の70%の強度のハンドグリップ運動を1分間続けてもらい、その前後の血圧、脈拍、瞳孔機能(初期瞳孔径、縮瞳率、縮瞳速度、散瞳速度)を測定した。

 その結果、負荷後の収縮期血圧(SBP)と脈拍は、両群とも負荷前に比して有意に増加した(それぞれP<0.05、P<0.01)。アムロジピン群では拡張期血圧(DBP)にも有意な増加を認めた(P<0.01)。

 また、アムロジピン群では、瞳孔機能のパラメータのうち、縮瞳率と縮瞳速度、散瞳速度に有意な増加を認めた(それぞれP<0.01、P<0.05、P<0.01)。一方のシルニジピン群では、縮瞳速度のみ有意な増加がみられた(P<0.05)が、増加は軽微で、アムロジピン群との間に有意な差が得られた(P<0.05)。

 次いで小池氏らは、加速度脈波を測定し、波形指数(waveform index)から血管年齢を算出した。また、心拍変動を解析し、交感神経機能の指標とされる中間周波数成分/高周波数成分比(LF/HF)を求めた。その結果、アムロジピン群では、血管年齢とLF/HFは有意に上昇していた(ともにP<0.05)が、シルニジピン群では有意な変化は認められなかった。

 以上の結果から、シルニジピンにはハンドグリップ負荷による交感神経機能の亢進を抑制する効果があることが示唆されたが、アムロジピンには同様の効果は認められず、シルニジピン独自の作用であると考えられた。

 小池氏らは、瞳孔機能検査は簡便かつ非侵襲的に交感神経機能を評価できる優れた検査であることが示されたと指摘した。同氏は、「今回の検討では、ハンドグリップ負荷から瞳孔機能検査までに要した時間は5分弱であり、負荷前の測定に備えて安静で待機する時間を含めても20分もあれば測定が可能。これほど迅速に交感神経機能を評価できるツールはないのではないか」と延べ、本検査が有用なツールになることを示唆した。

(日経メディカル別冊編集部)