自治医科大学内科学講座循環器内科学部門主任教授の苅尾七臣氏

 交感神経抑制作用を有するL/N型Caチャネル拮抗薬であるシルニジピンが家庭血圧に及ぼす効果を検討したACHIEVE-ONE研究で、同剤が降圧作用と共に、早朝血圧と夜間血圧の差(ME差)が大きい症例ほどME差を低下させ、心拍数が高い症例ほど心拍数を低下させたことが示された。心血管イベントの危険因子である高心拍数やME差が改善されれば、イベント予防効果も期待できる。自治医科大学内科学講座循環器内科学部門主任教授の苅尾七臣氏らが、10月20日に宇都宮で開幕した日本高血圧学会で報告した。

 ACHIEVE-ONEでは3000人余の高血圧患者を登録。シルニジピンによる介入下での家庭血圧と24時間自由行動下血圧(ABP)の変化を検討している。今回の解析では、ベースライン時の早朝家庭血圧の測定記録がある2319人を対象に、12週間の治療前後の外来血圧と家庭血圧(早朝と就寝前)、心拍数の変化を調べた。

 対象患者の平均年齢は67.8歳、脳血管障害の既往が8.1%、虚血性心疾患の既往が18.8%、糖尿病の既往が15.2%に認められた。また、ほぼ半数の患者がレニン-アンジオテンシン系(RAS)抑制薬を併用(ARB46.7%、ACE阻害薬5.6%)、8.4%がβ遮断薬を併用していた。

 12週間のシルニジピン治療により、これらの患者の外来血圧と家庭血圧(早朝、就寝前)はいずれも有意に低下した(すべてP<0.05)。これに伴い、外来血圧と早朝血圧が共にコントロールできている患者(外来収縮期血圧〔SBP〕<140mmHgかつ早朝SBP<135mmHg)の割合は、ベースラインの5.7%から12週後には35.9%へと著明に増加した(P<0.0001)。また、早朝血圧と就寝前血圧が共にコントロールできている患者(早朝SBP<135mmHgかつ就寝前SBP<135mmHg)の割合も、同じく7.7%から38.8%へと増加した(P<0.0001)。

 心拍数についても、外来、早朝、就寝前のいずれも有意な低下が認められた(すべてP<0.05)。その結果、早朝血圧と早朝心拍数のコントロールがともに不良な患者(早朝SBP≧135mmHgかつ早朝心拍数≧70拍/分)の割合は46.5%から24.4%へとほぼ半減した(P<0.0001)。

 興味深いことに、シルニジピン投与による早朝血圧の降圧効果と早朝心拍の抑制効果は、早朝血圧が高ければ高いほど、あるいは早朝心拍数が多ければ多いほど大きかった。早朝血圧と心拍数へのこうした作用は、RAS系抑制薬やβ遮断薬の併用の有無にかかわらず一貫していた。

 さらに、早朝血圧と就寝前(夜間)血圧の平均(ME平均)と差(ME差)のコントロールがともに不良な患者(ME平均≧135mmHgかつME差≧15mmHg)の割合は、ベースラインの20.9%から、12週目にはほぼ3分の1の7.1%へと激減した(P<0.0001)。この治療によるMEの変化量は、ベースライン時のME差が大きいほど治療による是正効果が高くなることが示された。

 以上の結果より、シルニジピンは降圧と併せ、心拍数の高い症例ほどより心拍数を大きく低下させ、また、ME差が大きい症例ほどME差を大きく低下させることが示された。

 苅尾氏は、「これらの効果は、同剤の交感神経抑制作用を反映したものと考えられる。ME差が大きい症例に対して、その是正に有効なシルニジピンには、心血管イベントリスク低減を含めた顕著な効果が期待できるのではないか」と語った。

(日経メディカル別冊編集)