滋賀医科大学教授の三浦克之氏

 循環器疾患による死亡を予測する因子として、血圧の重要性はすでに多くの研究で示されている。しかし、近年増加した降圧薬服用者における血圧と循環器疾患死亡の関連を検討した研究は少ない。そこで、日本人を対象とした大規模コホート統合研究JALSJapan Arteriosclerosis Longitudinal Study)において、ベースライン時の降圧薬服用の有無別および血圧状況別に、CVD死亡を追跡したところ、服薬なし群では血圧上昇に対して死亡率が直線的に上昇していたが、服薬あり群では一貫した上昇を示さないことなどが明らかになった。10月20日に宇都宮市で開幕した日本高血圧学会(JSH2011)で、滋賀医科大学教授の三浦克之氏らが発表した。

 JALS統合研究は、日本の34集団を対象とした大規模コホート研究。2002年から2004年にかけて測定されたベースライン時のデータのうち、服薬状況、血圧値に欠損のない7万2366人(女性61.4%、平均年齢59.9歳)を対象として、2008年までの死亡追跡結果を検討した。

 対象者のうち、ベースライン時の降圧薬服用率は男性19.9%、女性21.6%だった。追跡期間中(中央追跡期間5.6年)の総死亡は3072人、CVD死亡は582人だった。

 ベースライン時の降圧薬服用の有無、および血圧(正常血圧、高血圧前症、ステージ1高血圧、ステージ2高血圧の4分類)の組み合わせによって、それぞれの性・年齢調整CVD死亡率比(Poisson回帰モデルによる、1000人当たり)を算出。降圧薬なしで正常血圧を1(参照値)とした。

 降圧薬なし群では、正常血圧1(参照値)、高血圧前症1.26(95%信頼区間:0.94-1.70)、ステージ1高血圧1.17(同:0.85-1.62、ステージ2高血圧2.30(同:1.66-3.20)だった。

 一方、降圧薬あり群では正常血圧で2.01(同:1.27-3.19)、高血圧前症1.36(同:0.94-1.97)、ステージ1高血圧1.93(同:1.39-2.69)、ステージ2高血圧2.06(同:1.45-2.94)だった。

 ベースライン時の血圧が正常血圧のCVD死亡率比は降圧薬あり群(2.01)の方が、降圧薬なし群(1)よりも高いという結果が得られた点については、「CVDリスクが高いのは、主に心疾患死亡によるものだった。あくまでベースライン時が正常血圧であった場合のCVD死亡の予測能であり、その後の降圧コントロール状況の影響なども考えられるだろう」と三浦氏は話した。

 高血圧前症群のCVD死亡リスクについては、降圧薬なし群と降圧薬あり群ではほぼ同等の値(1.26対1.36)だったが、ステージ2高血圧については、降圧薬あり群(2.06)の方が、降圧薬なし群(2.30)よりもややリスクが低かった。

 さらに血圧上昇とCVD死亡率比の関連について、スプライン関数で平滑化したグラフを求めたところ、降圧薬なし群では、収縮期血圧の上昇に対して死亡率比もほぼ直線的に上昇したが、降圧薬あり群では、途中でやや下降するなど一貫した上昇傾向は見られなかった。

 三浦氏は、「2000年以降、日本人の降圧薬服用者は増加しており、CVD死亡を予測する際には、血圧値に加えて降圧薬服用状況も考慮することが重要だ。降圧薬の情報が得られていない観察研究の解析などでは特に注意が必要だろう」と語った。

(日経メディカル別冊編集)