「減塩の実現にはpopulation approachが有効であり、減塩の重要性を国民に周知し、さらに、加工食品や外食の場において減塩を推進することが重要である」──10月15日から福岡市で開催された第33回日本高血圧学会の減塩に関するシンポジウムで、東京大学社会予防疫学教授の佐々木敏氏が訴えた。

 講演の冒頭で、30歳以上の男女95人ずつを対象に、丁寧な食事記録を行って1日の平均食塩摂取量を調べた調査を紹介。その結果、高血圧学会が推奨している6g未満を満たしている患者は1人もいなかったことを示し、現在、わが国では、国民のほとんどが基準を満たしていない現状があると指摘した。

 佐々木氏は、食塩を食べること(危険因子)と高血圧になること(疾患)が集団の中で高い割合で認められること、人によって食塩感受性に差があるものの、両者の関係がほぼ全員に成立することを指摘。減塩によってほぼすべての人がその恩恵に浴すること、減塩によって不利益を被るひとがほとんどいないこと、個人の努力よりも社会の努力による方が実施しやすいこと、減塩に要する経費が安価なことなどを挙げ、食塩の感受性の問題を除けば、減塩による高血圧予防はpopulation approachに最適であるとの考えを述べた。

 さらに佐々木氏は、厚生労働省が発表している日本人の食事摂取基準(2010年版)に言及。食事摂取基準の食塩摂取量は男性9g/日未満、女性7.5g/日未満と、日本高血圧学会の定める6.0gよりも高い目標値であることを紹介し、その理由として、この値は給食の献立をたてることができるかどうか、他の栄養素の摂取が妨げられる恐れがないかどうかなど、5年後を目途とした時限付きであり、あくまで実現可能性を重視して定められているものと説明した。

 現状を見据えた上での減塩のためのpopulation approachとして、(1)マスコミや教育現場を利用して国民全員に減塩の大切さを知らせること、(2)減塩食品加工物を増やしたり、公共の食堂などで低塩食の提供を増やすこと――の2点が有用であるとの考えを述べた。

 特に2つ目のアプローチは、個人の努力を要さない点で減塩の実現可能性が高く、これには、企業努力だけでなく、政府の後押しが必要とした。

 佐々木氏は、「食塩摂取量の測定は非常に難しい。現実的かつ効果的な減塩を展開するためには、減塩に関する疫学研究の更なる強化が不可欠だろう」と述べ、発表を締めくくった。

(日経メディカル別冊編集)