東北大学の井上隆輔氏

 喫煙は多くの疾患のリスク因子であるが、最近では受動喫煙もがんや虚血性心疾患などのリスクを高めることが分かってきた。しかし、タバコ煙への曝露が血圧を短期的に上昇させるという報告はあるが、慢性的な受動喫煙が血圧に及ぼす影響はほとんど報告されていない。そこで東北大学の関真美氏、井上隆輔氏(写真)らは大迫研究のデータを基に、受動喫煙が家庭血圧に及ぼす影響を検討し、10月15日から福岡市で開催された第33回日本高血圧学会でその結果を報告した。

 大迫地域住民において、再現性が高く予後予測能にも優れる家庭血圧を用いて、受動喫煙者と非受動喫煙者の血圧値を比較検討した。対象は35歳以上の非喫煙女性で、1998年に実施した自記式アンケート『生活習慣と健康に関する調査票』の受動喫煙に関する設問に回答した者のうち、朝の家庭血圧を3日以上測定し、本研究への参加同意が得られた579人である。そのうち、474人が降圧薬を内服していなかった。

 受動喫煙の有無は、家庭あるいは職場などで他の人が吸ったタバコの煙を吸うことがあるかどうかで判定し、家庭でも職場などでもほとんどないと回答した者を非受動喫煙群、それ以外はすべて受動喫煙群とした。なお、受動喫煙群は、タバコ煙への曝露の場所によって、受動喫煙群(家庭)、受動喫煙群(職場など)、受動喫煙群(家庭+職場など)の3群に分類した。

 受動喫煙がほとんどない非受動喫煙群は143人、受動喫煙群(職場など)は47人、受動喫煙群(家庭)は129人、受動喫煙群(家庭+職場など)は155人であった。受動喫煙群は非受動喫煙群に比べて、年齢が低めで、既婚者が多く、飲酒率が高かった。

 結果をみると、朝の家庭収縮期血圧は、非受動喫煙群(113.1mmHg)に比べて受動喫煙群で高い傾向があり、特に「家庭」(116.2mmHg)、「家庭+職場など」(116.8mmHg)でタバコ煙に曝露されている群では有意に高かった。晩の家庭収縮期血圧でも、非受動喫煙群(111.9mmHg)に比べて受動喫煙群で高い傾向があり、特に「家庭+職場など」(115.3mmHg)でタバコ煙に曝露されている群では有意に高かった。

 タバコ煙への曝露の頻度によって、受動喫煙群を受動喫煙群(時々)、受動喫煙群(毎日)の2群に分けて、頻度と血圧の相関を検討したところ、家庭収縮期血圧は朝でも晩でも非受動喫煙群に比べて受動喫煙群で高い傾向にあり、特に受動喫煙群(毎日)群ではいずれも有意に高かった。

 一方、拡張期血圧や心拍数では、受動喫煙の有無と有意な関連性は認められなかった。

 今回の検討から、一般地域住民において、受動喫煙と家庭収縮期血圧との間に正の相関が認められることと、場所や頻度を問わず受動喫煙は家庭収縮期血圧を上昇させることが明らかとなった。受動喫煙による血圧の上昇は、他の受動喫煙による有害な作用とともに、相乗的に脳心血管疾患の発症に寄与する可能性が考えられる。そのため、井上氏は、「受動喫煙に伴う血圧上昇による脳心血管疾患の発症を抑制するためにも、早急な受動喫煙対策が必要だ」と強調した。

(日経メディカル別冊編集)