久留米大心臓・血管内科の甲斐久史氏

 JSH2009の認知度は高く、ガイドラインで推奨されている治療を「ほとんど」「おおむね実践する」と答えた医師は83%に上ること、しかし、診療においては減塩指導が十分に行われておらず、目標摂取量など具体的指導の推進が今後の課題であることなどが明らかになった。

 久留米大心臓・血管内科の甲斐久史氏らが福岡県内科医会・佐賀県医師会内科医部会の会員に対して行ったアンケート調査により明らかになった。10月15日から福岡で開催された第33回日本高血圧学会で甲斐氏が発表した。

 甲斐氏は、2009年に改訂された高血圧診療に関するガイドラインJSH2009が実地医家の診療に役立っているのか、また実地医家が日常の高血圧診療においてどのような考えを持っているのかについてアンケート調査を行った。

 対象は福岡県内科医会の会員2065人と佐賀県医師会内科医部会の会員350人の計2415人。平成22年の6〜8月に、郵送調査法を行った。回収率は37.1%。

 調査対象者の背景は、男性90.2%、女性9.8%。50歳代が最も多く32.8%、60歳代24.9%、70歳代18.3%、40歳代16.9%だった。勤務形態は、人開業は68.9%、病院勤務は20.5%だった。診療は内科が88.5%、全体の90.7%が高血圧学会の非会員だった。

 JSH2009ガイドラインについて、91.0%が知っていると答えた。内容をどのように知ったかという問いに対しては、「入手した」が38.7%、「講演会に出席した」が20.4%、「医学メディアを通して一部知っている」が18.9%だった。JSH2009発表後、日本高血圧学会が全国各地で講演会を主催したが、この講演会はガイドラインとその内容の普及に関して貢献したと甲斐氏は指摘した。

 「JSH2009を知っている」と答えた医師の10.0%がJSH2009の推奨に沿った診療を「忠実に行っている」と答え、72.5%が「おおむね行っている」と答えた。

 「JSH2009ガイドラインのリスク層別化を診療に利用しますか」という問いに対しては、「おおむね応用している」が12.4%、「一部応用している」が61.6%だったのに対し、「層別化は知っているが診療上考慮していない」が17.2%、「層別化は知らない」が13.5%だった。

 「現在の高血圧診療に満足していますか」という問いに対しては、「満足」8.1%、「おおむね満足」71.9%、「どちらとも言えない」12.5%、「やや不満」6.4%、「不満」1.1%だった。

 「不満」「やや不満」と答えた医師に対して理由を尋ねたところ、循環器・腎専門医、そのほかの診療科のいずれにおいても、「他のリスク因子のコントロール不十分」が20%以上と最も多く、そのほか、「随時血圧の降圧不十分」「家庭血圧の降圧不十分」などが多かった。

 「1日の食塩摂取量をどのくらいに指導していますか」という問いに対して、JSH2009で推奨されている「6g以下」と答えたのは25%に満たなかったのに対して、「指導しない」は約23%、「10g以下」16%、「7g以下」が約17%を占め、減塩の重要性に対する啓蒙や具体的指導の推進が必要であることが浮き彫りになった。

 甲斐氏は「高血圧のガイドラインは認知度が高く、80%以上の医師が実際の診療に使用していた。高血圧の診療については80%が満足しているが、他のリスクのコントロールや降圧不十分症例が問題とされていた。今後は、減塩指導について、目標摂取量などのさらなる周知徹底が必要だろう」との考えを述べた。

(日経メディカル別冊編集)