富山逓信病院(富山市)内科の島倉淳泰氏

 動脈硬化度や高血圧が慢性腎臓病(CKD)の発症や進展に関連することはよく知られているが、CKD発症と動脈硬化との経時的な相互関係は明らかではない。そこで、富山逓信病院(富山市)内科の島倉淳泰氏らは1.5万人の検診データを用いて、CKD発症に及ぼす動脈硬化と高血圧の関連性を検討し、福岡市で10月15日から開催された第33回日本高血圧学会でその結果を発表した。

 今回、検討対象としたのは日本労働文化協会恵比寿健診センター(東京都渋谷区)などにおいて、動脈硬化指標であるCAVI(Cardio-Ankle Vascular Index)測定を含む循環器健診および一般健診を2回以上経時的に受け、かつ初回健診時にCKDではないと判定された1万5278人(男性7304人、女性7974人)。CKDは推算糸球体濾過量(eGFR)が60mL/min/1.73m2未満あるいは蛋白尿陽性(2+以上)と定義した。

 初回健診時の対象者の背景は、年齢が47歳、血圧が124/74mmHg、総コレステロールが210mg/dL、HDLコレステロールが67mg/dL、トリグリセリドが107mg/dL、血中尿素窒素(BUN)が13.7mg/dL、尿酸が5.1mg/dL、血清クレアチニン0.69mg/dL、eGFRが80.8mL/min/1.73m2、HbA1cが 5.2%で、CAVIが7.50であった。

 平均追跡期間は659日で、その間にCKD発症が確認されたのは917人(6.0%)。なお、CKDの発症率は、高血圧、糖尿病、脂質異常症、55歳以上、収縮期血圧140mmHg以上、拡張期血圧90mmHg以上の群ではそうでない群に比べ、それぞれ有意に高かった。また、対象者をCAVI値で3分位したところ、CKD発症率は第1分位(低値群)が3.1%、第2分位が5.7%、第3分位(高値群)が9.3%であり、CAVI値が高い群ほどCKD発症率は有意に高かった。

 また、高血圧治療を受けている者を高血圧群、受けていない者を高血圧未治療群として対象を2群に分けて検討したところ、CKD発症の累積リスクは高血圧群で有意に高かった。次に、検討対象を初回健診時の収縮期血圧140mmHg以上と同未満、拡張期血圧90mmHg以上と同未満でそれぞれ2群に層別したところ、累積CKD発症リスクはいずれも血圧高値群で有意に高かった。

 Cox比例ハザードモデルを用いた検討では、CKD発症の有意なリスク因子として、男性(ハザード比1.70)、年齢55歳以上(同2.13)、高血圧(同1.22)、CAVI高値群(同1.58)が抽出され、CAVIのハザード比は高血圧のそれより高かった。

 このように、加齢や性別、高血圧とともに、CAVIで評価した動脈硬化度の上昇がCKD発症に先行して観察されたことから、両者には密接な関連性があることが示唆された。こうした結果を踏まえて島倉氏は、「健診では一般検査に加えて血管機能検査を行うことで、CKDのハイリスク群を同定できるのではないか」と締めくくった。

(日経メディカル別冊編集)