東邦大学医学部の上芝元氏

 長時間作用型Ca拮抗薬は、降圧とともにインスリン抵抗性改善作用を有するという報告がいくつかある。インスリン抵抗性に交感神経活性が関係している可能性があることから、東邦大学の上芝元氏らはL/N型Caチャネルを阻害するCa拮抗薬シルニジピンのインスリン抵抗性に及ぼす効果を検討した。またこの研究では、血中インスリンと負の相関を示し、動脈硬化、肥満、糖尿病などの改善作用があるといわれる副腎アンドロゲンのひとつであるデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)に及ぼすシルニジピンの影響についても検討し、その結果を10月15日からまで福岡市で開催された第33回日本高血圧学会総会において報告した。

 対象はインスリン抵抗性が認められる本態性高血圧患者(HOMA-R 2.5以上、糖尿病合併なし)16例と軽症糖尿病合併高血圧患者7例で、高血圧未治療、もしくはARBによる治療を受けているが血圧が140/90mmHg以上の患者。全員にシルニジピン10mg/日を投与し、治療前と治療後の3〜6カ月時点と12〜15カ月時点で、BMI、血行動態、糖代謝関連指標、血中DHEA濃度などを測定し、治療による変化を検討した。

 収縮期および拡張期血圧は、治療前152/85mmHgから3〜6カ月後時点で138/78mmHg、12〜15カ月後時点には137/77mmHgと有意に低下した(p<0.01)。また心拍数も、治療前83拍/分から3〜6カ月後時点で79拍/分と有意に低下、12〜15カ月後時点でもそのレベルを維持していた。

 空腹時血中インスリン値は、治療前から治療後3〜6カ月にかけて有意に低下、その後も低レベルで推移した(治療前:12.9μU/mL → 3〜6カ月後時点:8.0μU/mL → 8.1μU/mL)。インスリン抵抗性の指標であるHOMA-Rも同様の傾向が見られた(同3.40 → 2.10 → 2.18)。

 血中アディポネクチン濃度は治療前から治療後3〜6カ月にかけて有意に上昇、その後も高レベルで維持された(5.8μg/mL → 9.8μg/mL → 9.6μg/mL)。また、12〜15カ月後時点における心拍数の変化は、血中アディポネクチン濃度の変化と負の相関があることも明らかになった。

 血中DHEAについては3〜6カ月かけて有意に上昇、12〜15カ月後時点でもそのレベルは維持されていた(3.2 ng/mL → 5.8 ng/mL → 5.9 ng/mL)。またDHEAの硫酸抱体(DHEA-S)濃度も、同様の傾向が見られた(47.5μg/dL → 69.7μg/dL → 68.8μg/dL)。

 BMI、空腹時血糖値、HbA1c値、血中レニン活性、コルチゾール濃度、アルドステロン濃度などには変動は認められなかった。
 
 こうした結果から上芝氏は、シルニジピン投与によりインスリン抵抗性あるいは軽症糖尿病を合併した高血圧患者の血圧、心拍数が低下するとともに、インスリン抵抗性が改善すること、アディポネクチンが上昇すること、心血管保護作用をもつ副腎アンドロゲンが増加すること、そして1年以上経過した後でも、その効果は持続していることが明らかになったとし、その機序として交感神経の関与が示唆されると述べた。

(日経メディカル別冊編集)