社会保険中央総合病院心臓病センターの野田誠氏

 高血圧の進行と心血管合併症の増悪に自律神経系の反射異常が関与するといわれるが、高血圧患者における自律神経機能の影響とそれに対する降圧薬の効果を評価した臨床研究は少ない。社会保険中央総合病院心臓病センターの野田誠氏らはこの点に着目し、高血圧患者を対象に心拍変動の解析により自律神経機能を評価するとともに、交感神経抑制作用をもつCa拮抗薬シルニジピンの効果を検討し、その結果を10月15日〜17日まで福岡市内で開催された第33回日本高血圧学会総会において報告した。

 野田氏らは、本態性高血圧と診断された連続18例(平均年齢:60.2歳、男性11例)を対象に、L型およびN型Caチャネルを阻害するCa拮抗薬シルニジピン10mg/日を3ヵ月間単剤で投与し、運動負荷試験における血圧、心拍数の変化を観察するとともに、ホルター心電図検査施行時と運動負荷中の心拍変動を解析し、自律神経機能の変化を解析、関連指標の測定値を投薬前後で比較した。

 安静時の収縮期血圧は治療前161mmHgから治療後142mmHgへと有意に低下した(p=0.001)。最大運動負荷直後の収縮期血圧は、治療前194mmHgから治療後177mmHgに、心拍数は138拍/分から129拍/分に低下し、いずれも投薬後は投薬前に比べて有意に低下した(それぞれ、p=0.007、p=0.0001)。

 安静時に対して運動負荷後の心拍数は、最大運動負荷直後、負荷終了1分後、同5分後とも正の相関を示したが、シルニジピンの投与により最大運動負荷直後、負荷終了1分後の心拍数は相対的に低下した。これは運動負荷により過剰に上昇した心拍数の回復が速まったことを意味する。シルニジピンは安静時と運動負荷終了5分後の心拍数の関係に変化をもたらさなかったが、迷走神経活性の指標である心拍変動の高周波成分(HF)を減少させた。これは心拍数上昇に反応する迷走神経の緊張が軽減したことを示している。

 迷走神経活性の指標としてホルター心電図データから得られるSDANN(5分毎のRR間隔の標準偏差)の変化を検討したところ、深夜0時から昼の12時までの時間帯におけるSDANNがシルニジピン投与により有意に上昇した(p=0.005)。

 こうした結果から、シルニジピンは安静時の血圧を低下させるとともに運動負荷後の血圧と心拍数の過剰上昇を抑制することが示されたが、野田氏はその機序について、シルニジピンが安静時の迷走神経機能を回復させること、運動負荷時の自律神経を介した血圧と心拍数の反応を軽減することが示唆されたと述べた。

(日経メディカル別冊編集)