埼玉医科大学総合医療センター腎高血圧内科の叶澤孝一氏

 血圧が季節変動することはこれまでの研究から明らかになっているが、高血圧が発生要因の1つである微量アルブミン尿も季節変動することが示された。福岡市で10月15日から開催されている第33回日本高血圧学会で、埼玉医科大学総合医療センター腎高血圧内科の叶澤孝一氏が発表した。

 微量アルブミン尿は高血圧や糖尿病性腎症における初期の臓器障害の重要なマーカーであり、心血管病や末期腎不全のリスク因子でもある。一方、血圧はこれまでに季節変動することが示されてきたが、微量アルブミン尿に季節変動があるかどうかは検討されていなかった。

 そこで叶澤氏らは、高血圧診療のために大学病院およびクリニックを受診した患者181例を対象に、各季節に尿中アルブミン排泄量(UAE)の季節変動について解析を行った。対象者は、少なくとも各季節1回以上のUAE測定記録があり、観察中に降圧薬の変更がなく、UAEが微量アルブミン尿あるいは正常の範囲内(300mg/g・Cr以下)にある患者を抽出した。また、血圧は待合室での自動血圧測定器による測定、診察室での医師による測定、家庭血圧にて測定した。

 対象者の登録時背景は、男性87例、女性94例、年齢64歳、糖尿病合併例は57例(31.5%)、推定糸球体濾過量(eGFR)は67.4mL/min/1.73m2で、60mL/min未満の症例は55例(30.4%)であった。UAEの平均値は38.5mg/gCrであった。

 UAE測定時には降圧薬としてARBが65.7%、Ca拮抗薬が62.5%、サイアザイド系利尿薬が19.4%、β遮断薬が15.5%、ACE阻害薬が13.4%、α遮断薬が7.9%に投与されていた。また、血圧の平均は待合室血圧で131.1/73.7mmHg、診察室血圧で136.8/74.8mmHg、家庭血圧で129.2/76.9mmHgだった。

 対象全体におけるUAEの各季節値は、春季38.0mg/gCr、夏季29.1mg/gCr、秋季43.1mg/gCr、冬季45.0mg/gCrで、夏季のUAEは他の季節に比べて有意に低かった。

 糖尿病の有無でUAE季節変動を検討したところ、非糖尿病群では夏季のUAEが他の季節に比べて低かったが、糖尿病群ではUAE季節変動幅は少なく、群間には有意差が認められた。

 診察室血圧、家庭血圧、待合室血圧のいずれの血圧指標においても、収縮期/拡張期血圧値には季節変動が存在し、待合室血圧と家庭血圧では夏季の血圧は他の季節の血圧に比べて有意に低く、診察室血圧では夏季の血圧は秋季、冬季の血圧に比べて有意に低かった。

 3つの血圧指標とUAEとの関連性を検討したところ、どの血圧指標を用いても、拡張期/収縮期血圧ともに血圧が高いほどUAEが高値となる正の相関が認められた。

 夏季および冬季の収縮期家庭血圧の変動が平均以上の群を高度血圧季節変動群、平均以下であった群を軽度血圧季節変動群として、両群のUAE季節変動を比較検討したところ、高度血圧季節変動群では軽度血圧季節変動群に比べて、UAE季節変動幅が大きく、群間には有意差が認められた。

 以上の検討から、UAEには季節変動があること、UAE季節変動は血圧の季節変動の影響を受けていると考えられることが示された。こうした結果に基づいて叶澤氏は、UAEの評価には季節性も考慮に入れるべきであり、複数回の測定で判定するのが望ましいと指摘。ただし、腎機能低下の進行が早いと考えられる症例では短期間での繰り返しの評価が求められるとした。

(日経メディカル別冊編集)