久留米大学心臓・血管内科の熊谷英太氏

 一般住民検診を解析した結果、アルドステロンは血圧調節因子であるだけでなく、インスリン抵抗性の進展に関与することが示された。久留米大学心臓・血管内科の熊谷英太氏らは、一般住民検診のデータを基に10年間の縦断的調査を行った結果を、福岡市で10月15日から開催された第33回日本高血圧学会で報告した。

 この研究の対象となったのは田主丸町研究に登録された一般住民で、福岡県久留米市田主丸町にて1999年および2009年に一般住民検診を受診し、1999年の時点で糖尿病治療中、空腹時血糖値≧126mg/dL、HbA1c値≧6.0%、HOMA-IR≧1.73の者を除外した564名。

 田主丸町研究は1958年からSeven Countries Studyの一環として開始された、わが国の平均的な農村地区の住民を対象としたコホート研究。同Studyが1994年に追跡終了した後も継続され、現在でも10年毎に循環器を中心とした住民検診を実施している。

 1999年のアルドステロン値で対象を3分位に分けて背景因子を比較したところ、アルドステロン値が高いほど若く(アルドステロン最高値群で60歳)、BMI(最高値群で23.5)やウエスト径(最高値群で78.3cm)は大きく、インスリン抵抗性の指標であるHOMA-IR、尿酸値、総コレステロール値や中性脂肪値が高かった。血圧には有意差は見られなかった(最高値群で132.6/79.4mmHg)。

 次に、インスリン抵抗性の判定基準をHOMA-IR≧1.73とし、年齢、性別、BMIで補正して、1999年のアルドステロン値がインスリン抵抗性の進展に及ぼす影響を検討した。その結果、アルドステロン値が最も低い群に比べて最も高い群では、インスリン抵抗性進展のオッズ比が2.044倍(95%CI 1.424-2.943、p<0.05)と有意に高かった。

 さらに、2009年のインスリン抵抗性進展の有無で対象者を2群に分け、背景因子を比較したところ、進展のあった群ではBMIやウエスト径が有意に大きく、収縮期および拡張期血圧が有意に高く、高血圧治療歴を有する者の割合が有意に高かった。

 アルドステロン濃度(3分割)とインスリン抵抗性の進展との関連を解析した結果、年齢、性別、BMI、1999年のHOMA-IR、収縮期血圧、高血圧治療歴で補正しても、アルドステロン最低値群を1とした場合、最高値群は1.6〜1.9倍のオッズ比となり、アルドステロン高値はインスリン抵抗性進展の有意なリスク因子であることに変わりはなかった。

 今回の田主丸町研究の一般住民検診データに基づく解析から、アルドステロンはインスリン抵抗性進展と強い正の相関を示すことが明らかとなった。インスリン抵抗性と関連性の強いBMIやウエスト径、その他の交絡因子で補正しても、有意な関連性は消失しなかったことから熊谷氏は、アルドステロン自体が独立してインスリン抵抗性進展に作用している可能性があると結論した。

(日経メディカル別冊編集)