和歌山県立医科大学の藪真悠子氏

 メタボリックシンドロームは動脈硬化の発症や進展にかかわっていると考えられているが、動脈硬化の初期段階に認められる血管内皮機能障害や動脈スティフネスの増大は、運動負荷時に過剰な血圧上昇をもたらす可能性がある。そこで、和歌山県立医科大学の藪真悠子氏らは、メタボリックシンドロームの構成因子の集積が運動負荷時の血圧反応性に及ぼす影響を検討し、その結果を10月15日から福岡市で開催された第33回日本高血圧学会で報告した。

 検討対象としたのは安静時血圧が120〜139/80〜89mmHgであり、脳心血管疾患や糖尿病、腎疾患の治療歴のない男性535人(平均年齢は43歳)。メタボリックシンドロームの各構成因子については、血圧高値(130〜139/85〜89mmHg)が262人で、脂質代謝異常(トリグリセライド≧150mg/dLかつ/またはHDLコレステロール<40mg/dL)が208人で、高血糖(空腹時血糖値≧110mg/dLかつ/またはHbA1c≧5.5%)が157人で、それぞれ認められた。

 運動負荷試験として、自転車エルゴメーターを用いた最大下漸増負荷試験を実施し(12.5W/分、毎分50回転)、右上腕の血圧を1分間隔で連続測定した。運動負荷時の血圧反応性は、100Wの運動強度下における平均血圧(=(収縮期血圧−拡張期血圧)÷3+拡張期血圧)を指標とした。運動負荷時において、収縮期血圧は175.3mmHg、拡張期血圧は90.0mmHg、平均血圧は118.5mmHg、心拍数は129.1拍/分、最大心拍数(=(運動時心拍数÷推定最大心拍数)×100)は72.0%、相対心拍数(=(運動時心拍数−安静時心拍数)÷(推定最大心拍数−安静時心拍数)×100)は51.7%であった。

 血圧反応性の指標である運動時平均血圧に及ぼす因子を検討したところ、年齢、安静時の拡張期血圧、安静時収縮期血圧、安静時平均血圧、安静時脈圧、運動負荷時心拍数、運動時相対心拍数、トリグリセライド、総コレステロール、non-HDLコレステロール、血糖、推定最大酸素摂取量、心拍数が最大心拍数の75%となる運動負荷(PWC75%HRmax)が有意に相関していることが明らかとなった。

 ただし、運動負荷時の血圧変化は、普段から運動しているか否かといった対象者の運動能力によって左右されるため、運動時平均血圧を相対心拍数で標準化したZスコアを用いて、メタボリックシンドロームの構成因子による影響を検討した。

 その結果、運動時平均血圧のZスコアは、血圧高値、脂質代謝異常、高血糖を有しているとそれぞれ有意に高かった。また、血圧高値である人においては、脂質代謝異常と高血糖の両方を認めた群はともに認めない群に比べ有意に高かった。

 さらに、ステップワイズ法で重回帰分析したところ、運動時平均血圧のZスコアの有意な因子として、安静時平均血圧、構成因子の集積(血圧高値に脂質代謝異常かつ/または高血糖の合併)、non-HDLコレステロールが同定された。

 以上の検討から、安静時血圧が正常域にある男性では、血圧高値、脂質代謝異常、高血糖の有無が運動負荷に対する血圧反応性に影響を及ぼすこと、その影響度は構成因子の集積により増大することが明らかとなった。藪氏はこれらの結果を踏まえ、「リスク因子の集積に伴う血管内皮機能障害や動脈スティフネスの増大が、運動負荷時の過剰な血圧上昇をもたらす可能性を示唆する」との見解を示した。

(日経メディカル別冊編集)