名古屋大学の高津美和氏

 Ca拮抗薬は血管平滑筋に存在するL型Caチャネルを遮断することにより血圧を低下させるが、中には交感神経活性に関与するN型Caチャネルを遮断するものがあり、その作用が臓器保護効果をもたらす可能性があるといわれている。N型Caチャネルを遮断するCa拮抗薬は、高血圧にともなう左室拡張障害を改善することが報告されているが、心筋リモデリングにどのような影響を及ぼすかは、まだ十分に解明されていない。名古屋大学大学院医学系研究科病態解析学分野の高津美和氏らは、高血圧ラットにおいてL/N型Caチャネル拮抗薬であるシルニジピンとアムロジピンの効果を検討した結果、シルニジピンは心筋リモデリングを抑制するとともに左室拡張障害を改善することを、10月15日から福岡市で開催されている第33回日本高血圧学会総会で報告した。

 実験にはDahl食塩感受性高血圧(DS)ラットを用いた。DSラットに高食塩食を投与すると進行性に高度の高血圧が誘導され、11週齢前後に代償性左室肥大(LVH)を発症する。そこで6週齢のDSラットを正食塩食投与群(対照群、n=6)と高食塩食投与群の2群に分け、さらに高食塩食投与群を7週齢から 1)薬物非投与(LVH群、n=6)、2)シルニジピン投与(Cil群、n=11)、3)アムロジピン投与(Aml群、n=10)、の3群に割り付け、11週齢まで治療を継続し、血圧および心筋リモデリング、左室機能に関連する指標を検討した。正食塩食としては食塩を0.3%含有する餌を、高食塩食としては食塩を8%含有する餌を与えた。シルニジピンとアムロジピンの投与量はともに3mg/kg/日とした。

 血圧上昇はLVH群に比べCil群、Aml群で有意に抑制されたが、両薬剤の降圧効果に差はみられなかった(11週齢の平均収縮期血圧:対照群133.5mmHg、LVH群188.9mmHg、Cil群166.1mmHg、Aml群163.7mmHg)。LVH群では対照群に比べ左室心筋重量と相対壁厚が著明に増加したが、Cil群とAml群では、ともにそれらの増加を抑制した。

 11週齢におけるCil群とAml群の左室心筋重量に差はみられなかったが、相対壁厚はCil群がAml群に比べ有意に小さく(p<0.05)、左室の求心性変化に対する抑制効果ではシルニジピンが高いと考えられることが明らかになった。

 また、LVH群では左室拡張機能の指標であるE波減速時間、等容弛緩時間が対照群に比べ著明に延長したが、Cil群、Aml群ではいずれも有意に短縮した。両指標に基づく左室拡張機能改善効果もシルニジピンがアムロジピンに比べ優れていた(p<0.05)。

 LVH群では心筋細胞の横断面積が対照群に比べ増加したが、Cil群、Aml群では心筋細胞肥大を同程度に抑制した。また、Cil群、Aml群ではLVH群にみられる冠動脈周囲、心筋間質における線維化の亢進を抑制したが、抑制効果はCil群で有意に高かった(p<0.05)。

 さらに両薬剤の心保護効果に差を生じた機序を探るため、心筋のレニン・アンジオテンシン(RA)系および炎症関連指標について検討したところ、LVH群ではアンジオテンシン変換酵素(ACE)、アンジオテンシンII-1型受容体、単球走化活性因子(MCP-1)、オステオポンチンの遺伝子発現が亢進していたが、Cil群のみでそれらの変化を有意に抑制していた(p<0.05)。

 こうした結果から高津氏は、シルニジピンの降圧効果、左室肥大抑制効果はアムロジピンと同等だが、左室の求心性変化、心筋線維化、左室拡張障害に対する改善効果ではシルニジピンがアムロジピンより高いことが示唆されたとし、その機序として心筋RA系と炎症を抑制する作用が関与している可能性があるとした。

(日経メディカル別冊編集)