福島県立医科大学の渡辺毅氏

 外来高血圧患者を対象とした全国縦断調査により、日本人の高血圧患者の実に43%に微量アルブミン尿以上の尿所見が認められることが明らかになった。10月15日から福岡市で開催されている第33回日本高血圧学会で、福島県立医科大学腎臓高血圧・糖尿病内分泌代謝内科教授の渡辺毅氏が発表した。

 尿中アルブミンは、慢性腎臓病(CKD)や心血管疾患(CVD)の発症予測因子として有効であるといわれている。しかし、高血圧症例におけるアルブミン尿の実態について日本全体を対象とした疫学データはまだない。そこで、渡辺氏らは、外来患者を対象に日本の高血圧症例のうちアルブミン尿を呈する患者がどれくらいいるかを全国横断的に調査した。

 対象は2009年9月から2010年3月までの約6カ月間に、試験紙を使った尿中アルブミン/クレアチニン比定性検査を実施した高血圧患者8963例。これらの患者の調査データを、全国639人の医師の協力を得て、インターネットで回収した。

 調査項目は、性別、年齢、身長・体重、CKDの診断状況、危険因子・合併症・既往歴、外来血圧値、尿蛋白定性検査、尿中アルブミン/クレアチニン比定性検査、降圧薬の処方状況など。外来血圧値は誤入力と考えられた7例を除いた8956例、eGFRは算出可能だった7350例が解析対象となった。

 尿中アルブミン/クレアチニン比定性検査は、アルブミン判定部分とクレアチニン判定部分がある試験紙を用い、新鮮尿に浸して比色判定する方法を用いた。2643例について、定性尿中アルブミン/クレアチニン比定性検査と尿アルブミン定量を比較した結果、30mg/gCr未満(正常)、30〜299mg/gCr(異常)、300mg/gCr以上(異常[高度])について一致率は約77%で、また定性検査で正常と判定されればほとんどが定量検査でも正常と判定されており、今回用いた検査は定性検査だが、定量検査とほぼ同等の判定能力を持っていることが示された。

 調査に参加した医師は、89.5%が開業医、10.5%が勤務医だった。主な診療科は、一般内科62%、循環器科16%、代謝・内分泌科5%だった。

 調査対象となった患者の背景は、男性50.7%、平均年齢67.4歳、平均BMI24.6、平均収縮期血圧/拡張期血圧138.3/78.7mmHg。この年齢分布や地域分布は全国的調査に基づく日本の実態とほぼ一致した。

 危険因子や合併症、既往歴は、喫煙が17.8%、糖尿病34.9%、脂質異常症57.2%、心筋梗塞・脳卒中8.9%だった。eGFRは、平均が69.7mL/分/1.73m2で、CKDの頻度は20.8%だった。

 尿蛋白定性検査は、陽性(「+」、「++」、「+++」)が13%、非陽性(「未実施」、「−」、「±」)が87%を占めた。

 アルブミン尿(尿中アルブミン/クレアチニン比定性検査)は正常域が57.1%、異常域が35%、高度異常域が7.9%で、全体の42.9%が微量アルブミン尿以上を示した。

 尿蛋白定性検査「−」だった6114人のうち30%がアルブミン尿(尿中アルブミン/クレアチニン比定性検査)異常域であり、尿蛋白定性検査が「−」であっても、高血圧患者の約30%がアルブミン尿異常を呈することが明らかになった。

 同様に、尿蛋白定性検査「±」においても、1241人中63%がアルブミン尿(尿中アルブミン/クレアチニン比定性検査)異常を呈した。

 糖尿病の有無とアルブミン尿陽性率の関連をみると、アルブミン尿陽性率は、糖尿病患者で51%、非糖尿病患者で38%。渡辺氏は、糖尿病の有無でアルブミン尿陽性率はそれほど大きくは違わないとし、微量アルブミン尿とは糖尿病に特有のものではないという判断を示した。

 アルブミン尿陽性率をeGFRレベルごとにみると、eGFRが低下するに従って、尿中アルブミン/クレアチニン比定性検査の異常域は増加した。注目されたのは、いずれのeGFR値でも微量アルブミン尿に相当する異常域の患者は4〜5割だが、eGFRが低下するに従って顕性蛋白尿に相当する高度異常を呈する患者が増加していた点だ。

 渡辺氏は、「日本人の高血圧患者ではアルブミン尿の異常を呈する例が高頻度で存在している実態が明らかになった。高血圧の患者全員を対象にアルブミン尿を測定するのはコスト的に難しい。高血圧に何らかの条件を加えて、特にリスクが高い人を対象にリスク予測因子としてアルブミン尿を利用するのが現実的なのではないか」と述べた。

(日経メディカル別冊編集)