国立循環器病センター高血圧腎臓内科の堀尾武史氏

 降圧治療中の高血圧患者について、JSH2009ガイドラインでリスク別に設定された目標血圧の到達率を調べたところ、外来血圧と家庭血圧の両方が目標値に到達したのは、高齢者では3分の1超だったが、若中年者と糖尿病合併、慢性腎臓病CKD)合併患者では、5%以下と極めて低いことが明らかになった。国立循環器病センター高血圧腎臓内科の堀尾武史氏らが、10月1日から3日に滋賀県大津市で開催された第32回日本高血圧学会総会で発表した。

 堀尾氏らは、国立循環器病センター高血圧腎臓内科外来で降圧治療中の高血圧患者979例(男性494例、女性485例)を対象とした。対象者のうち、高齢者は614例、若中年者364例、糖尿病合併者239例、CKD合併者が359例だった。CKDは各種腎疾患の診断があり、推定糸球体濾過率<60mL/min/1.73m2、または尿蛋白≧1+と定義した。

 外来血圧は、2007年1月〜12月の外来受診時血圧の平均値とした。家庭血圧は、同じ期間に、外来受診前3日間に測定した値の平均値とした。その上で、JSH2009ガイドラインで示されたリスク群別の降圧目標値に対する到達率を算出した。

 結果は、外来血圧では、高齢者の63%が目標値に到達しているのに対し、若中年者では28%、糖尿病は25%、CKDは20%と低かった。また、家庭血圧でも、高齢者は48%が目標値に到達しているのに対し、若中年者ではわずか11%に過ぎず、糖尿病群も8%、CKD群7%と極めて低かった。

 さらに、外来血圧と家庭血圧の目標到達状況から、コントロール良好(外来/家庭血圧とも目標値到達)、白衣高血圧(外来血圧は未達、家庭血圧は到達)、仮面高血圧(外来血圧は到達、家庭血圧は未達)、コントロール不良(外来/家庭血圧とも未達)の4群に分けて調べたところ、対象群全体ではコントロール良好者が36%と3割を超え、コントロール不良者は25%だった。高齢者群もほぼ類似の結果で、コントロール良好が35%、不良が26%だった。

 しかし、他の群では、若中年者ではコントロール良好が5%、不良が70%、糖尿病合併者では、コントロール良好が4%、不良が68%、CKD合併者では、コントロール良好は2%に過ぎず、不良は74%に達した。

 JSH2009ガイドラインにおける降圧目標値は、全体および高齢者では外来血圧が140/90mmHg、家庭血圧が135/85mmHgであるのに対し、若中年者では、外来130/85mmHg、家庭125/80mmHg、糖尿病では外来130/80mmHg、家庭125/75mmHg、CKDでは外来130/80mmHg、家庭125/75mmHgとなっており、高リスク群では厳格な管理を要求している。

 この降圧目標値を妥当と考えるか、という会場からの質問に対して堀尾氏は、本研究は2007年の治療成績を基にしており、現行ガイドラインで規定された厳しい目標値を目指した降圧治療を行ったわけではない、と断った上で、「家庭血圧の一般基準(135/85mmHg)を目標値とすれば、糖尿病群、CKD群とも4割超がコントロール良好となるのに、JSH2009基準ではここまで悪くなる。一律に降圧目標値を下げたのがよいのかどうか。特に、今回のCKD合併例は平均年齢72歳、しかも半数以上がGFR≧50だ。70歳以上でGFRが50以上あるのに、ガイドライン上はCKDに含まれてしまう。今後、議論しなければならないのではないか」とした。