関西医科大学第2内科の青田泰子氏

 頭側延髄腹外側野RVLM)は交感神経活動の制御中枢であり、血管運動中枢とも呼ばれる領域である。RVLMの周辺動脈による圧迫が認められる症例があるが、本態性高血圧患者ではその頻度が正常血圧者に比べて高く、動脈によるRVLM圧迫をともなう高血圧患者では交感神経活性が亢進していることが報告されている。また、動物実験でもRVLMに圧迫を加えると交感神経活性とともに血圧、心拍数が上昇することが明らかになっている。

 RVLM圧迫に対する治療法としては外科的な圧迫除去術があり、高血圧に対しても有効といわれるが、内科的方法により降圧が可能であれば、治療の幅が広がることは間違いない。関西医科大学第2内科の青田泰子氏らは、RVLM圧迫を伴う高血圧患者の降圧治療に適した治療薬を探索する試みを続けているが、今回は交感神経抑制作用をもつL/N型Ca拮抗薬シルニジピンの有効性を検討した。研究成果は、10月1日から3日に滋賀県大津市で開催された第32回日本高血圧学会総会で報告された。

 対象は診察室血圧が140/90mmHg以上で本態性高血圧と診断された未治療患者である。被験者全例に対し、延髄部の高分解能MRI検査(3D thin-slice T2強調像)を施行し、動脈によるRVLM圧迫(接触)が認められるNVC+群と、認められないNVC-群に分類した。

 治療として全例に対し、シルニジピン10mg/日を16週間単独投与した。治療前後で診察室および早朝家庭血圧血漿ノルエピネフリン濃度左室心筋重量(心エコー検査)などを測定し、NVC+群とNVC-群の間で比較した。シルニジピン投与期間中は脂質異常症治療薬、糖尿病治療薬、抗血小板薬の新規開始・変更は行わないこととした。

 MRI検査の結果、NVC+、NVC-と判定された患者はそれぞれ24例、22例であった。両群の年齢、性別、高血圧罹病期間、体格、腎機能指標、糖・脂質代謝指標に有意差は認められなかったが、交感神経活性を示す血中ノルエピネフリン濃度はNVC+群がNVC-群に比べ有意に高かった(平均512 v.s. 391pg/mL)。

 治療前の診察室血圧・脈拍は両群ほぼ同等であった。シルニジピン投与により収縮期血圧、拡張期血圧とも低下したが、降圧度はNVC+群がNVC-群に比べ大きかった。16週間の変化率を比較したところ、収縮期血圧、拡張期血圧ともにNVC+群はNVC-群に比べ、大きく低下した(p<0.05)。脈拍数は両群とも有意な差はなかった。

 早朝の家庭収縮期血圧は、治療前にはNVC+群がNVC-群に比べて有意に高かったが、シルニジピン投与後に著明に低下し、16週後にはNVC-群と同レベルまで改善した。治療前の拡張期血圧に有意な群間差はなく、治療後は両群とも有意に低下した。診察室血圧と同様、早朝の収縮期血圧と拡張期血圧の変化率は、NVC+群がNVC-群に比べて大きく低下した(p<0.05)。早朝の脈拍数に有意な変化はみられず、群間差も生じなかった。

 血漿ノルエピネフリン値は両群とも低下したが、低下度はNVC+群がNVC-群の約3倍と大きく、両群の差は有意であった。左室心筋重量係数はNVC+群で著明に低下し、NVC-群に比べ有意差が認められた。

 以上の成績は、シルニジピンの降圧効果はNVC+群において増強することを示した。青田氏はその原因として、NVC+群では交感神経活性が恒常的に亢進していることを指摘し、本剤の交感神経抑制作用が降圧とともに左室肥大の抑制においても有効性を発揮したとの見解を示し、RVLMへの圧迫を認める本態性高血圧患者に有用である可能性を示唆した。