横浜市立大学附属市民総合医療センター腎臓内科の小林麻裕美氏

 慢性腎臓病CKD)は脳血管障害のリスク因子として知られるが、逆に脳血管障害もCKDの予後増悪因子になる。10月1日から3日に滋賀県大津市で開催された第32回日本高血圧学会総会で、横浜市立大学附属市民総合医療センター腎臓内科の小林麻裕美氏がこんな研究結果を発表した。心臓と腎臓の疾患リスクの関連については多数の報告があるが、「心腎連関」だけでなく、「脳腎連関」にも注意が必要といえそうだ。

 小林氏らは、142例のCKD患者(男性96例、平均年齢64.7歳)を、無症候性脳梗塞ありの87例となしの55例に分けて2年間追跡した。エンドポイントは、血清クレアチニン(Cre)値の2倍化、透析導入、全死亡のいずれかが発生するまでの期間とした。登録時からの推定糸球体ろ過率(eGFR)の変化もみた。

 無症候性脳梗塞ありの群で36例(41.4%)、なしの群で10例(18.2%)がエンドポイントに達した。無症候性脳梗塞の有無で腎イベント(Cre値の2倍化、透析導入)の累積発症率を比較すると、ありの群で有意に高かった(p=0.0048)。eGFRの変化率は、無症候性脳梗塞ありの群は年9.72%減で、なしの群(3.00%減)に対する減少率は3.24倍だった(p=0.023)。Coxハザード多変量解析により、無症候性脳梗塞は、エンドポイントに対する独立した危険因子であることが確認された(p=0.033)。

 無症候性脳梗塞は、脳梗塞や脳出血といった脳病変の危険因子としてだけではなく、腎臓の予後予測因子の1つであることが示された。小林氏は、「脳と腎臓は、細動脈レベルまで高い圧のまま血流が保たれ、しかも自動調節能を持つという他臓器にない類似性を持つ。無症候性脳梗塞を有する患者では、脳の穿通枝動脈と同様、腎臓の糸球体輸入細動脈においても広範な細動脈障害を来している可能性が高い」と考察し、「脳、腎臓、心臓といった臓器障害は、臓器ごとではなく全身の血管病ととらえ、血管をターゲットとした積極的な治療が必要」とまとめた。