福岡大学心臓・血管内科学の杉原充氏

 高血圧患者では、酸化ストレスを介した交感神経活性の亢進が心血管系の臓器障害に関与することが報告されている。また、高血圧は、脂肪細胞由来のサイトカインであり抗動脈硬化作用や抗糖尿病作用などを有するアディポネクチンの減少を伴うとされるが、これも臓器障害を促進する要因と考えられる。

 福岡大学心臓・血管内科学の杉原充氏らは、このような知見を背景に、高血圧患者において交感神経抑制作用をもつCa拮抗薬シルニジピンのアディポネクチンに及ぼす影響を検討、本剤が血漿アディポネクチン濃度を有意に上昇させたことを明らかにした。成果は10月1日から3日に滋賀県大津市で開催された第32回日本高血圧学会総会で報告された。

 本態性高血圧患者17例(男/女:10/7例、平均68.2歳)を対象に、L/N型Caチャネル阻害作用をもつシルニジピンを投与し、24週間治療を継続した。17例中、他のCa拮抗薬からシルニジピンに変更した患者は12例、Ca拮抗薬新規投与の患者は5例だった。シルニジピンの投与量は平均13.5mg/日。投与前、投与開始6週、12週、18週、24週後に血圧、心拍数、血糖値、HbA1c、血漿アディポネクチン濃度、尿中アルブミン排泄量の測定を行った。

 血圧は、シルニジピン投与前149.2±20.8/82.6±11.3mmHgから投与開始24週後132.5±13.9/74.2±7.5mmHgへ、脈拍数は80.0±11.9拍/分から73.5±10.8拍/分へといずれも有意に低下した。血糖値、HbA1c、尿中アルブミン排泄量は低下傾向を示したが有意ではなかった。また、血漿アディポネクチン濃度は3.8±1.5μg/mlから5.1±2.2μg/mlへと有意に上昇した。試験前に他のCa拮抗薬を服用していた12例に限っても、血漿アディポネクチン濃度は有意に上昇した。降圧度とアディポネクチン変化量の関係を解析したが、両者の間に相関は認められなかった。

 杉原氏は、アディポネクチン濃度の上昇が降圧度に依存しないこと、他のCa拮抗薬からの切り替え例でも著明な上昇が認められたことから、この作用が本剤に固有なものである可能性が高く、その機序としてN型Caチャネル阻害によるシルニジピンの交感神経抑制作用が関与している可能性があることを示唆した。