写真左が発表者で大阪大学大学院老年・腎臓内科の志水秀郎氏、中央は大阪府立急性期・総合医療センターの萩原俊男氏、右は共同研究者で大阪大学大学院老年・腎臓内科の楽木宏実氏

 高齢者では種々の疾患が相互に絡み合い、病態が複雑化する傾向があるが、複数の疾患に共通の病因や背景が認められることも少なくない。その一例として高血圧骨粗鬆症の関係が注目されており、一部の降圧薬には骨量骨密度を改善する作用のあることが報告されている。

 大阪大学大学院老年・腎臓内科の志水秀郎氏らは、昇圧因子である交感神経活性の上昇が骨吸収を促進するとの報告や、交感神経を抑制するβ遮断薬により骨折頻度が低下することを示した成績に着目。L型Caチャネルに加えてN型Caチャネルを阻害し交感神経終末からのノルエピネフリン放出を抑制する、Ca拮抗薬シルニジピン骨代謝に及ぼす影響を動物実験により検討した。研究成果は、10月1日から3日まで滋賀県大津市で開催された第32回日本高血圧学会総会で発表された。

 本実験では高血圧自然発症ラットSHR)に卵巣摘出術を施して作成した高血圧・骨粗鬆症誘発ラットを対象に、シルニジピン3mg/kg/日および対照薬としてアムロジピン3mg/kg/日を28日間経口投与し、骨代謝マーカーと骨塩量を測定した。

 シルニジピンとアムロジピンは高血圧・骨粗鬆症誘発ラットの血圧を同程度に低下させたが、心拍数はシルニジピン投与群でのみ有意に低下した。

 血清中のカルシウム濃度、リン濃度に対しては、シルニジピンもアムロジピンもほとんど影響を及ぼさなかった。シルニジピン群では骨形成マーカーであるアルカリフォスファターゼALP)活性が上昇、骨吸収マーカーの酒石酸耐性酸性フォスファターゼTRAP)活性が低下した。これらの変化はいずれも有意ではなかったが、ALP/TRAP比は薬剤非投与の高血圧・骨粗鬆症ラット群に比べ有意に高値であった。

 一方、アムロジピン投与群ではALP活性、TRAP活性、ALP/TRAP比に明らかな変化はみられなかった。また脛骨近位部のTRAPを染色し染色面積を定量したところ、シルニジピン群では薬剤非投与群に比べて染色面積が有意に減少し、骨吸収が低下したことを示したのに対し、アムロジピン群では有意な変化は認められなかった。DEXA(Dual Energy X-ray Absorptiometry)法により測定した脛骨近位部の骨塩量は、シルニジピンにより有意に増加したが、アムロジピンは骨塩量を変化させなかった。

 志水氏は以上の成績から、Ca拮抗薬シルニジピンはN型Caチャネル阻害作用を介して骨吸収・形成のバランスを改善する可能性があると指摘し、閉経後骨粗鬆症を合併した高血圧患者への有用性が期待できるとの見解を示した。