公立学校共済組合九州中央病院の冨永光裕氏

 降圧治療中の高血圧患者における脈波伝搬速度baPWV)の変化を、平均4年にわたって追跡した研究でアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬やアンジオテンシン2受容体拮抗薬ARB)を服用していたグループでは、3〜6年と長期にわたって増加が抑制されることが示唆された。公立学校共済組合九州中央病院の冨永光裕氏らが、10月1日から3日まで滋賀県大津市で開催された第32回日本高血圧学会総会で、長期追跡の続報として発表した。

 冨永氏らは、自院で高血圧症治療中の外来患者のうち、3〜6年間の追跡期間中、baPWVを3回測定し得た107例(男性50例、女性57例)を対象とした。患者の平均年齢は63±11歳、平均外来血圧は132±12/73±8mmHgだった。脈波伝搬速度の測定にはForm PWV/ABI(オムロン コーリン製)を用いた。

 患者は開始時のACE阻害薬またはARB服用の有無で、服用群(n=34)と未服用群(n=73)の2群に分けた。両群で、男女比、年齢、BMI、糖尿病・脂質異常症の比率などに有意な差はなかった。

 投与していた降圧薬の種類は、服用群ではACE阻害薬56%、ARB44%、Ca拮抗薬65%、β遮断薬9%、α遮断薬21%、αβ遮断薬12%、利尿薬15%だった。未服用群では、Ca拮抗薬85%、β遮断薬41%、α遮断薬15%、αβ遮断薬4%、利尿薬12%だった。なお、未服用群では、観察期間中7人(10%)にACE阻害薬/ARBが導入された。

 観察の結果、服用群の平均baPWV値(cm/秒)は、初回1832、2回目1734、3回目1750と2回目、3回目の値が初回を下回っていたのに対し、未服用群では、同じく1740、1767、1797と次第に増加していた。baPWV値の変化(2回目と初回、3回目と初回の差)については両群で有意差が認められた(p=0.008、p=0.006)。

 baPWV値の変化を目的変数とする重回帰分析を行った結果、年齢、性別、BMI、収縮期血圧、血圧変化、観察期間で調整しても、ACE阻害薬/ARB服用の有無が有意な説明因子になった。

 冨永氏は、「脈波伝搬速度に対するレニンアンジオテンシン系抑制薬の短期的な影響については、有効性が得られたとする報告は多いが、今回、長期的にも有効との結果が得られ、長期にわたって動脈硬化の進展を抑制できる可能性が示唆された」とした。