北里大学医療衛生学部リハビリテーション学科の増田卓氏

 糖尿病を合併した高血圧に対しては厳格な降圧治療が必要とされる。糖尿病合併高血圧患者の降圧治療ではレニン・アンジオテンシン系抑制薬が第一選択薬として用いられるが、単剤での降圧目標達成は容易でなく、降圧効果の優れたCa拮抗薬が併用されることが多い。その場合、どのCa拮抗薬を選択するかが問題となるが、L型とN型Caチャネルを阻害するCa拮抗薬は優れた降圧効果とともに交感神経の過剰な興奮を抑制し、糖尿病患者のアルブミン尿を改善する作用を示すことが報告されており、糖尿病合併高血圧の治療に適したCa拮抗薬として期待を集めている。

 北里大学医療衛生学部リハビリテーション学科の増田卓氏らは、糖尿病合併例を含む高血圧患者の治療におけるL/N型Ca拮抗薬シルニジピンの有効性を検討し、糖・脂質代謝、腎保護の観点からみて有用性が認められると報告した。研究成果は10月1日から3日に滋賀県大津市で開催された第32回日本高血圧学会総会で発表された。

 研究グループは、外来通院中の本態性高血圧患者77例を、糖尿病合併の有無により2群に分け、L/N型Ca拮抗薬としてシルニジピン10-20mg/日を、L型Ca拮抗薬としてアムロジピン2.5-7.5mg/日をそれぞれ8カ月間投与し、クロスオーバー法で比較した。

 それぞれの投与期間の終了時に、脂質代謝の指標として血清総コレステロールLDL-コレステロールHDL-コレステロール中性脂肪、糖代謝の指標としてHbA1c空腹時血糖HOMA-R、腎機能の指標として推算糸球体濾過量eGFR)、尿中アルブミン/クレアチニン比レニン活性アルドステロンを測定した。

 試験期間中は降圧目標(130/85mmHg未満)を達成するため、Ca拮抗薬以外の降圧薬も併用されたが、使用頻度が最も高かったのはアンジオテンシン2受容体拮抗薬ARB、39.0%)で、以下、β遮断薬(33.8%)、利尿薬(27.3%)、ACE阻害薬(16.9%)の順だった。これらのうちβ遮断薬の使用頻度は糖尿病合併群が非合併群に比べて低かったが、他の薬剤の使用頻度には糖尿病合併の有無で明らかな差はみられなかった。試験期間中、個々の患者における併用薬の種類や投与量の変更は行っていない。

 全被験者でみた血圧と心拍数は、シルニジピン投与時130±10/77±8mmHg、64±7拍/分、アムロジピン投与時130±9/78±8mmHg、65±8拍/分と同等であった。糖尿病非合併群(42例)において、シルニジピン投与時にはアムロジピン投与時に比べインスリン抵抗性の指標であるHOMA-Rが有意に低下した。糖尿病合併群(35例)において、シルニジピン投与時にはアムロジピン投与時に比べ血清中性脂肪が有意に低下した。また、シルニジピンはアムロジピンに比べ、腎機能指標のeGFRを有意に上昇させ、レニン活性と尿中アルブミン/クレアチニン比を有意に低下させた。

 本研究の特徴は、高血圧患者を糖尿病合併の有無により2群に分けてL/N型Ca拮抗薬の有効性を検討したことだが、増田氏は、シルニジピンが糖尿病を合併した高血圧患者において脂質代謝と腎機能を改善し、糖尿病を合併していない高血圧患者において糖代謝を改善したことから、本剤が糖尿病合併高血圧の治療だけでなく、糖尿病を合併しない高血圧患者における糖代謝改善の観点からも有用性が期待できると述べた。