滋賀県大津市で開催された第32回日本高血圧学会総会では、ありそうでなかった試みが行われた。人口レベルの高血圧対策で切り札とされる減塩のアピールとして、会期中のランチョンセミナーで供される昼食が、すべて学会特製の減塩弁当だったことだ。

 さて、そのお味は? 通常、取材時には弁当を受け取らないのだが、今回に限って3日間とも試食させていただくことにした。下の写真は3日目のもの。ご覧のようになかなか豪華だ。添付のメニューは次のとおり。塩分2.2g、エネルギー689kcalとなっていた。

ご飯:白飯(黒ごま)
煮物:カボチャ、けんちん、巾着、タケノコ、ニンジン、絹さや
   タケノコ土佐煮、レンコンうま煮
ローストビーフ(レタス載せ、レモン、トマト添え)
揚げ出し豆腐あんかけ
デザート:メロン、あんこ餅

 ローストビーフはわずかに塩味がついていた。肉も上質でうま味があり、添えてあるレモンをかけると十分おいしい。また、写真左上のタケノコとレンコンは甘めの味がついていて、なかなか美味だったが、他の煮物はダシの味わいが感じられず、単に茹でただけではないかと思われた。揚げ出し豆腐にも塩味は全くついていなかった。

 周囲を見渡すと、開始早々なのに早めに食べ終えて講演に集中する姿が多く見受けられた。参加者の評価は星3つとはいかなかったようだ。

 3日間とも、総じて肉・魚はそれ自体のうま味があり、わずかな塩味でも味わうことができたが、野菜類には改善の余地がある。減塩にした分、ダシを強く効かせたり、香味野菜を使うといった工夫が必要だ。

 3日目の高血圧・FJSH特別企画セッションで、街のレストランで減塩・低カロリー食をという「こだわりのヘルシーグルメダイエットレストラン in 呉」プロジェクトについて報告した日下医院院長の日下美穂氏も、「今回のランチョン弁当をどう思うか」との問いに、「減塩メニューはダシを効かせるのが大切で、ただ塩を減らすだけではだめ。ただし、今回の弁当についてはノーコメントです」と答え、会場の苦笑を誘っていた。

 とはいえ、日本高血圧学会がこうした試みを行ったことは評価に値する。3日間のランチ試食で、改めて減塩を余儀なくされている患者さんや、減塩食を日々提供している栄養士さんの苦労と努力に頭が下がった。食塩はうま味を引き出す強力な調味料だが、一種の依存症を引き起こすし、食材が本来持っている微妙な味わいをマスクしてしまう。今回のランチョンは、食をみつめ直す絶好の機会になったのではないだろうか。