写真左が発表者の猪飼亜希子氏、中央が藤田正俊教授、右は共同研究者の小倉千佳氏

 心臓交感神経活性の上昇は高血圧患者の予後を悪化させることが知られている。従来の短時間作用型Ca拮抗薬は降圧に伴い交感神経活性の反射性亢進をきたすことが知られているが、この副作用は降圧作用が緩やかに発現する長時間作用型Ca拮抗薬が登場したことによりかなり軽減された。しかしそれに関する懸念はまだ完全に払拭されたわけではない。

 近年、Ca拮抗薬の中には、血管の収縮に関係するL型Caチャネルとともに交感神経終末に存在するN型Caチャネルを阻害するものが使用されるようになり、交感神経活性を抑制する作用が期待されている。京都大学人間健康科学系の猪飼亜希子氏らは、高血圧患者を対象にL/N型Ca拮抗薬シルニジピンの心臓交感神経活性に及ぼす影響を検討し、その効果はL型Ca拮抗薬より好ましい影響を及ぼすことを明らかにした。研究成果は滋賀県大津市で10月1日〜3日に開催された第32回日本高血圧学会総会で報告された。

 対象は、L型Ca拮抗薬アムロジピンを6カ月以上、単独で服用している高血圧患者18例である。被験者を2群に分け、1群(8例)にはアムロジピン(平均4.4mg/日)を継続投与し、他の1群(10例)についてはアムロジピンからシルニジピン(平均9.0mg/日)に変更して治療を続けた。

 試験期間は6カ月であった。アムロジピン継続投与群では6カ月間隔で2回、シルニジピン投与群では治療薬変更前と変更6カ月後に血圧、脈拍数を測定するとともに、心拍変動のスペクトル解析を行った。スペクトル解析では、中間周波数成分と高周波数成分の比(LF/HF)を心臓交感神経活性の指標、高周波数成分のトータルパワーに対する比(HF/TP)を心臓副交感神経活性の指標として検討した。

 両群の収縮期血圧と拡張期血圧は試験開始前から有意に変化することなく、前治療で達成された降圧レベルが試験期間を通じて維持された。脈拍数も治療前後で有意な変化を示さなかった。

 しかし、心臓交感神経活性の指標であるLF/HFは、アムロジピン継続投与群ではほとんど変化しなかったが、シルニジピン投与群では有意に低下した。また心臓副交感神経活性の指標であるHF/TPはアムロジピン継続投与群では治療前後で変化を示さなかったが、シルニジピン投与群のそれは有意ではないものの上昇する傾向を示した。

 L/N型Ca拮抗薬シルニジピンが高血圧患者の心臓交感神経活性を有意に低下させ、心臓副交感神経活性を軽度ながら上昇させたことから、猪飼氏は、L/N型Ca拮抗薬は心臓自律神経活性に好影響を与える可能性があると述べた。