京都府立医科大学循環器内科の栗本律子氏

 血管の石灰化は、血中カルシウムやリンが血管壁に付着して起きると考えられてきたが、血管平滑筋細胞VSMC:vascular smooth muscle cells)が老化して骨芽細胞様に変化し、石灰化を引き起こしている可能性が新たに示唆された。ヒトVSMCを用いたin vitroの研究成果として、京都府立医科大学循環器内科の栗本律子氏らが、10月1日から3日に滋賀県大津市で開催された第32回日本高血圧学会総会で報告した。

 石灰化が起きている血管壁付近では骨特有の遺伝子群や細胞群が多く、これらが石灰化に関連している可能性が既に指摘されている。栗本氏らはヒトVSMCを長期間培養して老化VSMCを作り、若いVSMCと比較した。すると老化VSMCでは、石灰化領域が占める比率とカルシウムの質量比が顕著かつ有意に増強していた。

 骨関連遺伝子の発現を調べたところ、老化VSMCでは若いVSMCに比べ、骨芽細胞に特有なアルカリフォスファターゼALP)と1型コラーゲンの発現が有意かつ大幅に増加しており、骨芽細胞の分化に必要な転写因子であるRUNX-2の発現も有意に増加していた。一方で、石灰化抑制因子であるMatrix Gla ProteinMGP)の発現は有意かつ著明に減少していた。

 次に、老化VSMCのALPと1型コラーゲンをノックダウンしたところ、いずれの場合も、石灰化は有意に抑制された。RUNX-2をノックダウンするとALP発現は有意に抑制されたが、1型コラーゲンの発現は有意な減少がみられず、老化VSMCの骨芽細胞様変化には、RUNX-2を経由する系と経由しない系の2つが関与していることが示唆された。

 また、老化VSMCと若いVSMCにスタチンRhoキナーゼ阻害薬を作用させたところ、どちらの薬剤も老化VSMCのアポトーシスを阻害し、MGP発現を有意に増加させて石灰化を抑制することが確かめられた。

 栗本氏はこれらの結果から、加齢による血管石灰化に血管平滑筋細胞の老化が関与していること、予防や治療にスタチンとRhoキナーゼ阻害薬が有効である可能性が示唆されたとした。