東京医科大学第二内科の冨山博史氏

 動脈の硬さの亢進は心血管疾患発症の危険因子とされるが、慢性腎臓病CKD)発症についても有意な予測因子になり得るようだ。職域健診コホートを5年超にわたって追跡し、動脈の硬さの指標となる上腕−足首間の脈波速度baPWV)とCKD発症の関連をみた研究により明らかになった。成果は、10月1日から3日まで滋賀県大津市で開催されている第32回日本高血圧学会総会で、東京医科大学第二内科の冨山博史氏が発表した。

 冨山氏らは、2002年度の職域集団健診受診者2354人のうち、baPWVのデータが得られ、明らかなCKD(推定糸球体ろ過率eGFRが60mL/min per1.73m2未満、または尿蛋白陽性)を有さない2084人(40歳±8歳、男性1670人、女性414人)を平均5.8年追跡した。

 この間、eGFRは79±10 mL/min per1.73m2から75±12 mL/min per1.73m2へと低下した(p<0.01)。baPVWも12.6±1.9(m/sec)から13.0±2.1(m/sec)へと速くなり、有意に悪化した(p<0.01)。経過観察中にCKDを発症したのは205人だった。CKDの危険因子とされる年齢、血圧、血糖値、コレステロール値、中性脂肪値、喫煙、BMI、薬物治療、開始時のeGFRで補正しても、開始時のbaPWVはCKD発症の独立した危険因子であることが確認された(p<0.01)。これらの結果から冨山氏は、「baPWVはCKD発症の予測因子になり得る」とした。
 
 腎機能障害は、血圧の上昇や交感神経系の亢進、炎症、酸化ストレス、脂質代謝異常などを介して血管障害を進める。一方、血管が硬くなると内膜へのストレスが高まるために血管障害が進む。さらに、血流の多い臓器では左室からの圧脈波が直接伝播し、血流量の多い腎臓などの臓器障害につながる。「血管が硬くなることが腎機能障害を起こす要因となり、腎機能障害も様々な因子を介して血管を硬くする方向に進む」と冨山氏は述べた。