京都大学内分泌代謝内科の横井秀基氏

 Ca拮抗薬L型Caチャネルの阻害により血管拡張作用を発揮するが、一部のCa拮抗薬は交感神経終末に局在するN型Caチャネルも併せて阻害し、交感神経活性を抑制する作用がある。腎臓では糸球体輸出細動脈にN型Caチャネルが存在し、慢性腎臓病患者においては、N/L型Ca拮抗薬が尿蛋白を減少させることが明らかになっている。京都大学内分泌代謝内科の横井秀基氏らは、滋賀県大津で開催されている第32回日本高血圧学会総会で、N/L型Ca拮抗薬シルニジピンが2型糖尿病性腎症モデルマウスの尿中アルブミン排泄量を低下させることを報告、その機序として糸球体内の細胞外シグナル制御キナーゼ(ERK)のリン酸化が関与している可能性を示唆した。

 横井氏らは、8週齢のオスdb/dbマウス(2型糖尿病性腎症モデル)を、(1)薬剤投与なし、(2)シルニジピン投与(10mg/kg)、(3)L型Ca拮抗薬ニトレンジピン投与(10mg/kg)の3群に分けて8週間飼育した。ほかにdb/mマウスからなるコントロール群を作成した。血圧、尿中アルブミン排泄量、血糖、HbA1cを測定するとともに、腎組織の変化と糸球体内のERKのリン酸化を評価した。

 結果として、シルニジピン投与群、ニトレンジピン投与群ではdb/db群(薬剤非投与)に比べ、観察期間を通じて血圧が約5mmHg低下した。8週後の尿中アルブミン排泄量はdb/db群546μg/mgCr、ニトレンジピン群425μg/mgCr、シルニジピン群356μg/mgCrであり、シルニジピン群が最も低かった。血糖とHbA1cは、3群間で明らかな差を生じなかった。

 腎を組織学的に検討した結果、db/dbマウスの3群では、メサンギウム面積がdb/m群に比べ有意に増加したが、その程度はシルニジピン群が最も低く抑えられており、ニトレンジピン群との間に有意差が認められた。db/db群とニトレンジピン群では、免疫染色により評価した糸球体内ERKのリン酸化がdb/m群に比べて有意に亢進したが、シルニジピン群ではERKリン酸化が抑制され、db/m群との間に有意差は認められなかった。

 横井氏は以上の成績に基づき、N/L型Ca拮抗薬シルニジピンは、2型糖尿病性腎症モデルマウスの血圧を低下させるだけでなく、尿中アルブミン排泄量を減少させると述べた。また、尿中アルブミン排泄量が減少した機序として、糸球体の細胞増殖に関与するERKリン酸化の抑制が関係している可能性があるとの見解を示した。