日本薬科大学統合医療教育センターの永田勝太郎氏

 酸化ストレス防御系は自律神経系、免疫系、内分泌代謝系とともに生体のホメオスタシス(恒常性)維持機能を担っており、その障害は動脈硬化性疾患などの発症に関与するとされる。高血圧においても、酸化ストレスの亢進が病態を悪化させると推測されている。日本薬科大学統合医療教育センターの永田勝太郎氏らは、高血圧治療における酸化ストレス防御の可能性を検討、降圧薬によって酸化ストレス抑制効果が異なることを明らかにした。研究成果は、滋賀県大津市で開催中の第32回日本高血圧学会総会で報告された。

 永田氏らは、FRAS 4(イタリアWismerll社)という装置を用いて酸化ストレス関連指標を測定した。この装置は、活性酸素やフリーラジカルによって血中に生じたヒドロペルオキシド(ROOH)を光度計で測定するd-ROM(reactive oxygen metabolites)検査と、血中抗酸化物質の鉄イオン還元に伴う色の変化を測定するBAP(biological antioxidant potential)検査が可能。前者で酸化ストレス度、後者で抗酸化力を評価でき、さらに両者の比(BAP/d-ROM比)を、潜在的な抗酸化力の指標として用いることができるという。

 まず、健常者50例を対象に酸化ストレス防御能を測定したところ、d-ROM値は284.6±17.5CARR U、BAP値は2137.1±228.3μM、BAP/d-ROM比は1.005±0.131だった。これらの値を基準にして、高血圧患者における酸化ストレス防御能を評価し、2種類のCa拮抗薬の効果を検討した。

 高血圧患者71例を無作為にA群とC群の2群に分け、A群(36例、うち6例脱落)にはアムロジピン5mg/日を、C群(35例、うち2例脱落)にはシルニジピン10mg/日をそれぞれ3カ月間経口投与。治療前後における血圧、心拍数、酸化ストレス関連指標の変化を検討した。なお、高血圧患者のBAP/d-ROM比については、健常者の値(1.005±0.131)を1として算出した相対値(修正BAP/d-ROM比)を指標として用いた。

 治療前のアムロジピン群(A群)、シルニジピン群(C群)の血圧、心拍数には有意差はみられなかった。治療により収縮期血圧、拡張期血圧は両群とも有意に低下し、降圧度もほぼ同等だったが、心拍数はC群のみが有意に低下した。

 高血圧患者では、健常者に比べてd-ROM値は有意に高かったが、BAP値はほぼ同等で、その結果、修正BAP/d-ROM比が低く、酸化ストレス防御能は相対的に低下していた。A群とC群の間でこれらの指標に差は認められなかった。

 3カ月間の治療によりd-ROM値はC群で有意に低下したが、A群では治療前後でほとんど変化がみられなかった。BAP値はC群、A群とも有意な変化を示さなかった。C群では、d-ROM値の低下に伴って修正BAP/d-ROM比が有意に上昇し、健常者のレベルに近いところまで改善したが、A群の修正BAP/d-ROM比には変化がみられなかった。

 この成績は、アムロジピンとシルニジピンの降圧効果はほぼ同等だが、酸化ストレス防御系に対する作用が異なり、シルニジピンには酸化ストレス防御能を高める作用があることを示唆した。

 永田氏は、「シルニジピンの酸化ストレス抑制作用の詳細な機序は明らかでないが、心拍数低下をもたらすN型Caチャネル阻害作用が、酸化ストレス防御系にも好ましい影響を及ぼしている可能性があり、降圧治療のエンドポイントが梗塞性疾患の予防にあることを考えると、シルニジピンはその付加的作用から合目的的な薬剤である」と述べた。