東北大大学院薬学研究科臨床薬学分野の渡邉悠美子氏

 地域住民を対象とした大迫研究で家庭血圧を追跡した結果から、高血圧の発症にかかわる4つの一塩基多型(SNPs)が同定された。東北大大学院薬学研究科臨床薬学分野の渡邉悠美子氏が、札幌で開催された第31回日本高血圧学会JSH2008)で報告した。

 遺伝子多型と高血圧の関連は多く研究されているが、これまでの研究は随時血圧をベースにしたもので、高血圧の有病者を対象とした横断的なものがほとんどだった。大迫研究は岩手県大迫町で1986年に始まった地域住民の前向きコホート研究で、今回の解析では家庭血圧をベースに、登録時に正常血圧だった住民を対象とし、高血圧の発症と遺伝子多型の関連を調べた。

 対象は大迫町の40〜79歳の一般住民で、家庭血圧の測定と遺伝子解析に同意し、ベースラインで正常血圧だった403人(平均年齢56歳、男性29%)。解析の対象とした遺伝子多型は、ミレニアム・ゲノム・プロジェクトで高血圧との関連が示されたSNPsのうちタイピングが可能だった36のSNPsと、高血圧との関連が以前から指摘されている15のSNPsの、計51のSNPs。これらについて12年の高血圧発症との関連を検討した。高血圧症は、家庭血圧値135/85mmHg以上あるいは降圧薬服用とした。

 追跡の結果、12年後までに高血圧を発症したのは403人中150人(37%)。正常血圧維持群と比較して、交絡因子補正後も高血圧発症と有意に関連したのは4つのSNPsだった。4つのSNPsとオッズ比はそれぞれ、rs3767489(RGS2近傍領域、オッズ比1.8)、rs4961(ADD1、同1.9)、rs2236957(CACNA2D2、同1.7)、rs769214(CAT、同1.6)だった。

 各SNPsで高血圧発症のリスクとなる多型をリスク多型とし、その数と高血圧発症との関連を検討したところ、リスク多型が1個の場合のオッズ比は1.6(P=0.2)、2個では2.6(P=0.01)、3個では4.7(P=0.001)、4個では16.9(P=0.006)となり、リスク多型の数が増えるごとに高血圧発症のリスクが増大した。

 会場からは、403人というサンプル数について検定力を疑問視する意見もあり、臨床に応用するにはさらに規模を拡大した研究が求められそうだ。また、今回明らかになったSNPsも含めて、疾患に関連する遺伝子多型を診断や治療、そして予防に生かす手段も並行して検討する必要がある。