高血圧診療において朝の血圧値の重要性を指摘するエビデンスは次々と示されているが、日常診療で応用するには家庭血圧の正確な記録があってこそ。しかし、患者の自己記録に任せていると、実際の血圧値よりも低めに記録されていることがしばしばありそうだ。こんな調査結果を、高知大学老年病・循環器・神経内科学教室の西永正典氏らが10月11日、札幌で開催された第31回日本高血圧学会JSH2008)のポスターセッションで報告した。

 西永氏らは地域在住の70歳以上の高齢者を対象に、患者が自己記録した家庭血圧値と、自動血圧計に記録された血圧値を比較した。対象とした高齢者は85人(平均年齢81歳、男性26人、女性59人)で、基本的ADLは全員が自立レベル。対象者にメモリー機能内蔵の自動血圧計を貸与し、1週間、朝夜1回ずつの計14回、血圧を測定して血圧日誌に記入するよう指導。対象者が記入した値と血圧計に記録された値を比較した。

 血圧計にメモリー機能が内蔵されていることは、測定を終了するまでは患者に伏せておいた。測定が終了した時点で対象者にその旨を説明し、今回の報告には同意が取れた患者のデータだけを集計した。

 その結果、自己記入の値とメモリーの値について、朝7回分が完全に一致したのは32人(37.6%)で、夜7回分は31人(36.5%)。朝夜の14回分となると、完全に一致したのは19人(22.4%)に過ぎなかった。朝の血圧値(収縮期)の平均は自己記入が149.3±20.7mmHgで、メモリーは151.9±22.8mmHg。夜は141.0±23.4mmHgと140.7±29.9mmHgだった。

 朝夜14回の測定値の一致回数を、14回の群(完全一致群)、10〜13回の群(軽度不一致群)、9回以下の群(高度不一致群)の3群に分けると、朝の血圧値はそれぞれ145.2±22.6mmHg、150.5±21.3mmHg、154.3±14.7mmHgだった。いずれの群においても朝の血圧値は自己記録の方が低く、差の平均は完全一致群が0.6mmHg、軽度不一致群が3.2mmHg、高度不一致群が5.2mmHgとなり、朝の血圧値が高いほど、低く記入されるという傾向が確認された。

 メモリーを確認すると、血圧値を低めに記入するほかにも、数回測定してみて平均値や一番低い値を記入するというパターンもあったという。

 結果を報告した西永氏は、「日常診療で家庭血圧値の自己記録を見ていて、『多くの人が、本当にこんなにコントロールがいいのか?』と疑問を感じたから」と調査の動機を語る。今回の調査は老年科の患者であったが、家庭血圧値を低めに記入するという傾向は勤労世代でより強い可能性もある。自動記録機能を有する家庭血圧計の使用とともに、患者指導の徹底が求められそうだ。