東京女子医科大学腎センター内科の大前清嗣氏

 慢性腎疾患CKD)の治療にはレ二ン・アンジオテンシン系(RAS)抑制薬が標準薬として用いられるが、降圧目標を達成するためにはCa拮抗薬を併用することも多い。しかし、どのサブクラスのCa拮抗薬を用いた場合に腎予後が改善するかについては検討されていなかった。10月9日から11日まで札幌市で開催された第31回日本高血圧学会総会の一般口演において、東京女子医科大学腎センター内科の大前清嗣氏(写真)は、同施設の症例データベースを基に非糖尿病性CKD患者の予後に及ぼす因子分析を行い、Ca拮抗薬サブクラスの違いが腎予後に影響を及ぼす可能性を報告した。

 Ca拮抗薬は化学骨格の違いからジヒドロピリジン(DHP)系と非DHP系に、作用するCaチャネルの違いからL型、N型、T型に分類される。これまでに、非DHP系、N型、T型のCa拮抗薬による尿蛋白減少効果が報告されているが、CKDの進行抑制を示した報告はなかった。また、Ca拮抗薬のサブクラスの違いがCKDの予後に及ぼす影響を検討した報告はなく、サブクラスと腎予後の関連性を検討することは重要だと考えられた。

 そこで、大前氏らは、東京女子医大第四内科のデータベース登録症例1747例のうち、非糖尿病性CKD患者、Ca拮抗薬服用中、観察期間1年以上、血清クレアチニンおよび尿蛋白が2回以上入力されている症例を抽出して、腎予後に及ぼす予後因子の解析を行った。

 エンドポイントはCKDステージ5到達もしくはeGFR変化量が-10mL/分とし、説明変数として年齢、性別、原疾患、登録時のeGFRおよび尿蛋白、観察終了時の血圧および尿蛋白、投与薬剤を挙げた。

 本解析の対象は111例で、年齢56.1歳、男性73例、登録時のeGFRは25.3mL/分、尿蛋白は1.72g/gCrだった。原疾患は慢性糸球体腎炎が59例と半数以上を占め、腎硬化症が21例で続いた。

 観察期間(平均値)は38.7カ月で、年当たりのeGFR変化量は−2.74mL/分であった。Ca拮抗薬はL型(アムロジピン等)が75例、T型(ベニジピン等)が28例、N型(シルニジピン)が9例、非DHP系が6例で投与されていた。

 エンドポイント到達の予後因子をステップワイズ法で検討したところ、原疾患では慢性糸球体腎炎と多発性嚢胞腎、ベースラインのeGFR低値、治療薬ではα遮断薬が予後不良の因子であること、N型およびT型のCa拮抗薬やACE阻害薬、利尿薬は予後良好の因子であることが明らかとなった。

 そこでCa拮抗薬サブクラスに注目し、L型Ca拮抗薬群とN型あるいはT型拮抗薬群の背景を比較したところ、eGF変化量だけが後者で有意に小さく、カプラン-マイヤー分析では、N型あるいはT型拮抗薬群ではL型Ca拮抗薬群に比べて腎予後は有意に良好であることが示された。

 以上の検討から、非糖尿病性CKDの治療では、Ca拮抗薬サブクラスとしてN型あるいはT型のCa拮抗薬を使用することで、腎予後が改善する可能性が示された。大前氏は、Ca拮抗薬サブクラスの腎保護効果を比較検討するプロスペクティブな長期試験を実施する必要があることを強調して、講演を締め括った。

(山岸倫也=メディカルライター)