会場外に設けられた臨時の中継コーナー

 第31回日本高血圧学会総会の最終日。午後2時から始まった特別企画2「JSH2009ガイドライン」には、750人以上が参加した。開催会場では収容しきれず、あらかじめ用意した3つの中継会場からも人があふれ、学会側は急遽、会場外にも臨時の中継コーナーを設置するなど対応に追われた。

 高血圧治療ガイドライン改訂案をめぐる討論は、スウェーデンUmea大学病院のLars H.Lindholm氏の基調講演を皮切りに、3時間にわたって繰り広げられた。Lindholm氏は、ESH/ESCおよびWHO/ISHが発表しているガイドラインをレビュー。特に薬物治療においては、ACE阻害薬とARBをめぐる最新のエビデンスを解説し、日本の高血圧診療にも活かされていくことに期待を表明した。

 次に登壇したのは、東北大学大学院薬学医学系研究科の今井潤氏。「血圧の評価とリスクの層別化」と題し、血圧値の分類と危険因子の評価などについて、高血圧治療ガイドラインJSH2004からの変更点を中心に解説した。

多くの会員が討論に参加した

 以下、特別企画2では、「初診時の高血圧管理計画」「薬物療法の進め方」「脳卒中・心疾患既往患者における降圧薬の使い方」「腎臓」「メタボリックシンドローム・糖尿病」「高齢者高血圧」など、改訂案の柱となるテーマごとに討論が進められた。

 その中から、留意すべき改訂案のポイントを拾った。

 「血圧の評価とリスクの層別化」では、(1)血圧値により、至適血圧、正常血圧、正常高値血圧、I度高血圧、II度高血圧、III度高血圧、(孤立性)収縮期高血圧に分類し判断する、(2)血圧値のほかに、血圧以外の危険因子、高血圧性臓器障害、心血管病の有無により高血圧患者を低リスク、中等リスク、高リスクの3群に層別化する、(3)糖尿病、慢性腎臓病の存在がリスクを高める、(4)正常高値血圧を含めたメタボリックシンドロームの存在にも注意する――などがポイントだった。

 「初診時の高血圧管理計画」では、(1)治療の対象はすべての高血圧患者(血圧140/90mmHg以上)であり、糖尿病や慢性腎臓病(CKD)、心筋梗塞後患者では130/80mmHg以上が治療の対象である、(2)降圧目標は若年者・中年者では130/85mmHg未満、高齢者では140/90mmHg未満とする、(3)糖尿病やCKD、心筋梗塞後患者では、降圧目標は130/80mmHg未満とし、脳血管障害患者では140/90mmHg未満とする――が注目点だった。

 また、降圧治療については、第1段階として生活習慣の修正を挙げ、降圧薬治療を第2段階と明記した。生活習慣の修正には、食塩摂取量の制限、減量、運動療法、アルコール摂取量の制限、果物や野菜の摂取の促進、飽和脂肪酸や総脂肪量摂取の制限、禁煙などが挙がっており、その上で、高血圧の予防のためには、「すべての国民が生活習慣の修正を心がけるべきである」とした。

 第2段階である降圧薬治療については、(1)開始時期は個々の患者の血圧レベル、心血管病に対する危険因子の有無、高血圧に基づく臓器障害の有無ならびに心血管病の有無から決定する、(2)降圧薬の使用上の原則は、1日1回投与の薬物で、低用量から開始する、(3)増量時には1日2回の投与法も考慮する、(4)副作用の発現を抑え、降圧効果を増強するためには適切な降圧薬の組み合わせ(併用療法)がよく、II度以上の高血圧では初期から併用療法を考慮する――などを案としている。

 「薬物療法の進め方」では、α遮断薬が第1選択薬から外れた点のほかは、討論の中で、どの薬剤を選択するかは主治医としての裁量にかかっていると強調された点が印象的だった。

 高血圧治療ガイドライン改訂案は、今回の学会での討論も踏まえ、最終的には2009年1月16日に正式に発行する運びとなっている。