香川大学医学部薬理学のYu-yan Fan氏

 L型・N型2つのCaチャネルに作用するCa拮抗薬シルニジピンは、高血圧患者の蛋白尿改善においてアムロジピンより優れた効果を持つ報告が数多くある。その理由を探る香川大学医学部薬理学Yu-yan Fan氏(写真)らは、高血圧モデルラットを用いた一連の実験から、シルニジピンはレニン・アンジオテンシン系(RAS)の抑制と酸化ストレスの抑制という2つの機序を介して腎障害の進展を抑制するとの仮説を打ち立て、10月9日から11日まで札幌市で開催された第31回日本高血圧学会総会のInternational Sessionにおいてその成果を発表した。

 同氏らは、14週齢の高血圧自然発症/NIH-肥満ラット(SHR/NDラット)48個体を12個体ずつ4群に分け、対照以外の群はそれぞれ、ヒドララジン、シルニジピン、アムロジピンの投与下にて20週間飼育した。その結果、対照群のラットは著明な高血圧が持続し、時間の経過とともに尿中蛋白/クレアチニン比の上昇を呈した。

 一方、降圧薬の投与を受けた3群の血圧はいずれも有意に低下し、シルニジピン投与群では尿蛋白の上昇も有意に抑制された。しかし、ヒドララジン投与群では6週目、アムロジピン投与群では13週目までは尿蛋白上昇が抑制傾向にあったものの、実験終了時(20週目)の尿中蛋白/クレアチニン比は対照群と同レベルであった。

 また、シルニジピン群では対照群に比し、血中・腎組織中のアンジオテンシンII(AII)レベルとアンジオテンシノーゲン発現の有意な低下が認められるとともに、酸化ストレスの指標であるチオバルビツール酸反応物質(TBARS)量やNADPH オキシダーゼの構成要素であるp22phox、gp91-phox発現の有意な低下が認められ、糸球体および腎髄質における活性酸素種産生が有意に抑制されていた。これに対し、アムロジピン投与群およびヒドララジン投与群では、こうした変化は一切認められなかった。

 さらにシルニジピン群では、腎組織中のTGF-βやCTGF、Collagen1の発現が有意に抑制されており、これらの変化はアムロジピン投与群およびヒドララジン投与群では認められなかった。

 これらのデータから、シルニジピンには、ヒドララジンはもとより同じCa拮抗薬であるアムロジピンにもみられないRA系抑制作用と抗酸化作用を備えていることを指し示す。Fan氏は、「シルニジピンの腎保護作用は、これら2つの作用を介してもたらされるものと考えられる」と結論した。

(宇田川久美子=メディカルライター)