正常高値血圧患者でも腎機能が低下していると心血管イベントリスクが高いことが明らかとなった。札幌医科大学公衆衛生学講座講師兼内科学第二講座講師の大西浩文氏が、10月9日から札幌市で開催された第31回日本高血圧学会総会で発表した。

 高血圧治療ガイドラインでは、腎機能を評価し、早期の腎障害を発見して厳格な血圧コントロールを行うことを推奨しているが、130-193/85-89mmHgである正常高値血圧患者が腎機能障害を合併した場合の心血管イベントのリスクについての検討が少ない。一方、昨年改訂された欧州の高血圧治療ガイドライン(ESH/ESC2007)では、正常血圧(120-129/80-84mmHg)や正常高値血圧(130-139/85-89mmHg)でも腎疾患や腎機能低下があるとリスクが高いことを指摘している。

 そこで大西氏らは、端野・壮瞥町研究で住民健診を受けた一般住民を対象に検討を行った。

 対象は、1991年、92年に健診を受けた一般住民で、糖尿病者(FPG16mg/dL以上かつ・またはOGTT200mg/dL以上かつ・または糖尿病治療中)および高血圧者(SBP140mmHg以上かつ・またはDBP90mmHg以上かつ・または降圧薬内服中)を除いた1063人を対象とし、最大8年間追跡した(平均追跡期間5.9±2.3年)。男性は475人で平均57.4±11.2歳、女性は588人で平均55.8±10.3歳だった。

 早朝空腹時に安静座位収縮期血圧、拡張期血圧、空腹時血糖値、総コレステロール値、中性脂肪値、HDLコレステロール値、血清クレアチニン値を測定した。腎機能は、Jaffe法で測定した血清クレアチニン値を用い、modified MDRD式によって推定糸球体濾過量(eGFR)を算出した。eGFRが60mL/min未満を腎機能低下と判定した。

 また、対象を、正常群、腎機能低下群、正常高値血圧群、正常高値血圧・腎機能低下群の4群に分け、解析を行った。

 観察期間中に見られた心血管イベントは、脳卒中24(脳梗塞8、脳出血4、くも膜下出血8、病型不明4)、心臓病46(狭心症27、心筋梗塞10、心臓性突然死を含むその他9)だった。

 累積生存率は、正常群に対して、腎機能低下群、正常高値血圧群は有意差がなかったが、正常高値血圧・腎機能低下群は有意に低下していた(p=0.00001)。年齢、性別、BMI、喫煙歴、総コレステロール値、空腹時血糖値などで調整後、正常群を1としたときの心血管イベントに対するCox比例ハザード比は、腎機能低下群1.20(95%CI:0.56-2.58、p=0.639)、正常高値血圧群1.83(95%CI:0.88-3.81、p=0.109)に対し、正常高値血圧・腎機能低下群は3.99(95%CI:1.94-8.21、p=0.0001)だった。

 性別で分けて心血管イベントに対するCox比例ハザード比を見た場合でも、正常高値血圧・腎機能低下群で有意に心血管イベントリスクが高まっており、ハザード比は、腎機能低下群、正常高値血圧群では有意ではなく、正常高値血圧・腎機能低下群において、男性の場合で3.31(95%CI:1.27-3.39、p=0.015)、女性の場合で6.44(95%CI:2.03-20.45、p=0.002)だった。

 この結果から、正常高値血圧患者が腎機能低下を合併することで有意に心血管イベントリスクが増加することが明らかとなり、正常高値血圧患者でも早期に腎機能を評価し、介入が必要となる可能性が示唆されたとまとめた。