香川県済生会病院の中津高明氏

 微量アルブミン尿UACR)の範囲は30〜300mg/g・Crと定義されているが、高血圧患者におけるUACR陽性例の大半は30mg/g・Cr以下の低値UACR例である。こうした基準値以下のUACRが心血管病の予後に関連するとの報告があるが、低値UACRに対する降圧薬の影響に関する報告は少ない。10月9日から11日まで札幌市で開催された第31回日本高血圧学会総会のポスターセッションにおいて、香川県済生会病院中津高明氏(写真)は、低値UACRを呈する未治療の高血圧患者に対するAII受容体拮抗薬(ARBバルサルタンCa拮抗薬シルニジピンの影響を比較検討した。さらに中津氏は追加検討を行い、シルニジピンのUACR低下作用は体血圧の低下とは異なる機序でもたらされた可能性があると考察した。

 同氏らは、低値UACRを呈する未治療の高血圧患者89例(バルサルタン群35例、シルニジピン群54例)に対し、各降圧薬投与前および投与後2、4、8、12、24、48週の外来スポット尿UACRを測定し、両者のUACR低下作用を経時的に観察した。その結果、シルニジピン群のUACR(投与前23.8mg/g・Cr)は週を経るごとに低下し、低下率は48週で最大となった(約50%の低下;p<0.05 vs 投与前)。

 一方のバルサルタン群も、4週以降は有意なUACR低下を認めたが、低下の度合いは上下を繰り返し、シルニジピン群とバルサルタン群とでは、UACR低下の動態が異なることが観察された。

 そこで中津氏は、シルニジピン群におけるUACRの「下がりかた」をより詳細に検討した。同群の患者のうち、投与前および投与後2、4、12週のUACRデータに欠落がなく、かつ連続3カ月以上の家庭血圧測定がなされた16例について、血圧およびUACRの最大低下量、時定数(初期値の約63%に低下するまでの時間)、収束値(最終的に到達した値)を求め、各因子間の相関を検討した。

 その結果、UACRの低下速度は血圧の低下速度より2〜3倍遅く、両者の時定数の間に相関は認められなかった。また、血圧の最大低下量とUACRの低下量との間にも相関は認められなかった。

 すなわち、シルニジピンによる低値UACR低下は体血圧の低下に依存したものではなく、他の機序の存在が示唆された。この点について、Fujitaら(2007)およびZhouら(2002)は、UACRの低下は輸出細動脈拡張による糸球体血圧低下と関連することを報告している。中津氏は、これらの報告を基に考察し、「シルニジピンのN型Caチャネルへの作用に基づく輸出細動脈の血管拡張作用は、L型Caチャネルへの作用に基づく全身血圧の低下作用よりやや遅れて現れるのではないか」と述べた。

(宇田川久美子=メディカルライター)