津軽保健生活協同組合健生病院内科の飯田寿徳氏

 シルニジピンは他のCa拮抗薬とは異なり、L型だけでなくN型Caチャネルを遮断することから、他のCa拮抗薬では得られない有用性が期待されている。しかし、日常臨床における使用経験の蓄積は十分ではなく、さらなる検討が必要とされていた。10月9日から札幌市で開催された第31回日本高血圧学会総会のポスターセッションにおいて、津軽保健生活協同組合健生病院内科の飯田寿徳氏(写真)は、外来通院中の本態性高血圧患者におけるシルニジピンの降圧効果、心拍数への影響を検討した結果を報告した。

 シルニジピンはL型だけでなくN型Caチャネルを遮断して交感神経終末からのノルエピネフリン遊離を抑制するため、降庄に伴う反射性頻拍が少ないことが報告されている。しかし、新規・単独投与だけでなく他のCa拮抗薬からの切り替え、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)やACE阻害薬との併用など、日常臨床使用における有用性を検討した報告は少ない。そこで飯田氏は、当該施設に外来通院中の本態性高血圧患者を対象に、シルニジピンの降庄効果および心拍数に及ぼす影響について検討した。

 本態性高血圧患者171例(年齢68.2歳、男性82例/女性89例)にシルニジピン(10mg/日)を投与した。投与法は新規・単独投与が21例、他の降圧薬(ARB/ACE阻害薬)への追加投与が41例、他のCa拮抗薬からの切り替えが109例であった。観察期間は3カ月とし、投与開始前、投与開始1、2、3カ月後に血圧および心拍数を測定した。

 シルニジピン投与開始時の収縮期/拡張期血圧は154.0/87.2mmHg、心拍数は76.4拍/分であった。シルニジピン投与後、収縮期/拡張期血圧は投与前に比べて1ヵ月後から有意に低下し、3カ月後には134.9/78.1mmHgにまで低下したが、心拍数には有意な変動は認められなかった。

 シルニジピンによる降圧効果は、新規・単独投与例、ARBやACE阻害薬への追加投与例、他のCa拮抗薬からの切り替え例のいずれにおいても更なる降圧が認められ、アムロジピンやエホニジピンからの切り替え例でも有意に降圧した。

 一方、心拍数については、ベースラインにおける心拍数のカットオフ値を85拍/分として層別解析を実施したところ、心拍数高値例ではシルニジピン投与1カ月後から有意な低下が認められたが、心拍数低値例では有意な変動は認められなかった。こうした結果は他のCa拮抗薬からの切り替え例でも同様であった。

 心拍数高値例でのみ心拍数抑制効果が認められ理由として、シルニジピンのN型チャネル遮断作用が、交感神経興奮時のノルアドレナリン放出を抑制したことが考えられる。このことから、他のCa拮抗薬で反射性頻脈を示す症例では、シルニジピンが有用である可能性が示唆された。

 シルニジピンは新規・単独投与、ARBやACE阻害薬への追加投与、他のCa拮抗薬からの切り替えなど、一般的な日常臨床における使用に際しても、心拍数を上昇させることなく、安全に十分な降圧効果が得られたことから、有用性の高い薬剤であると考えられる。

(山岸倫也=メディカルライター)