蛋白尿を伴う高血圧患者を対象にRAS抑制薬へのCa拮抗薬の併用効果を検討したCARTER studyでは、シルニジピンアムロジピンに比べて蛋白尿抑制作用が強いことが示されている。10月9日から札幌市で開催されている第31回日本高血圧学会総会のポスターセッションにおいて、シルニジピンによる腎保護作用の機序に関し、抗酸化作用、特に脂溶性に基づく組織移行性の高さに対する増強という観点から検討した成果を、東京大学医学部腎臓内分泌内科丸茂丈史氏が報告した。

 シルニジピンの抗酸化作用については、2000年の日本高血圧学会で、ヒト末梢血白血球からのH2O2産生をアムロジピンに比べて強く抑制することが報告されている。ジヒドリピリジン系Ca拮抗薬はその化学構造からラジカルスカベンジ作用が期待されるが、シルニジピンはさらに脂溶性がアムロジピンに比べ高いことから、抗酸化作用がより強いことが予測される。

 そこで今回の検討では、培養ヒトメサンギウム細胞(HMC)をイオノマイシン処理してスーパーオキシドを産生させる実験系を用いて、シルニジピンとアムロジピンのスーパーオキシド産生抑制作用、その下流にあるNFκB活性抑制作用について比較検討した。

 HMCをイオノマイシンで刺激するとスーパーオキシド産生、NFκB活性が亢進するが、イオノマイシンと同時にシルニジピン、アムロジピンを10−9〜10−5mol/Lの濃度範囲で添加すると、スーパーオキシド産生、NFκB活性のいずれもが濃度依存性に低下した。この際、低濃度領域ではシルニジピンの方が抑制作用は強かった。

 以上の検討から、シルニジピンは抗酸化作用を有することが明らかにされた。

 また、シルニジピンの脂溶性はアムロジピンに比べて1.5倍ほど高いことが示されており、脂溶性の高いシルニジピンは組織内への移行性が良好で、組織内における抗酸化作用が増強される可能性が考えられた。そこで、イオノマイシン処理前に両試験薬でHMCを前処理し、抗酸化作用に違いが生じるかどうかを検討した。

 結果として、HMCをイオノマイシンで刺激する1時間前にシルニジピンを添加すると、スーパーオキシド産生量、NFκB活性の抑制作用は増強されたが、アムロジピンではこうした増強作用は認められなかった。

 以上の検討から、シルニジピンとアムロジピンは共に抗酸化作用を有するが、シルニジピンの高い脂溶性が、組織局所における抗酸化作用を高める機序が考えられた。「CARTER studyで確認されたシルニジピンの蛋白尿抑制作用の一部は、シルニジピンの高い脂溶性が腎組織局所における酸化ストレス抑制に寄与した結果であると推測される」と丸茂氏は結論した。

(山岸倫也=メディカルライター)