松山赤十字病院の村上一雄氏

 本態性高血圧の治療では、血圧コントロールだけでなく、臓器保護の観点から酸化ストレスを抑制することも重要である。10月9日から札幌市で開催されている第31回日本高血圧学会総会のポスターセッションにおいて、松山赤十字病院村上一雄氏(写真)は、N型Caチャネル阻害薬であるシルニジピンが、降圧効果とは独立して、交感神経の抑制を介して酸化ストレスを軽減する可能性を示した研究結果を報告した。

 本態性高血圧患者では活性酸素種(ROS)が増加しており、それが臓器障害や血管障害の発症・進展・維持に関与していることが報告されている。また、ROSの増加がレニン・アンジオテンシン系や交感神経系の賦括化を介している可能性も指摘されている。

 今回、村上氏は、本態性高血圧症患者にN型Caチャネル阻害薬であるシルニジピンを投与し、酸化ストレスの指標として尿中8-イソプロスタンを測定して、交感神経の抑制が酸化ストレスに及ぼす影響について検討した。また、シルニジピンが腎機能やインスリン抵抗性に及ぼす影響についても併せて検討している。

 対象は、糖尿病や顕性アルブミン尿を伴わない本態性高血圧患者13例(男性7例、女性6例、平均年齢は57歳)である。シルニジピンは10〜20mg/日を6カ月間投与し、血圧、脈拍、尿中8-イソプロスタン値、尿中アルブミン排泄量(UAE)、推算糸球体ろ過量(eGFR)インスリン抵抗性指数(HOMA-IR)の変化を検討した。

 収縮期/拡張期血圧はベースラインの163/96mmHgから、シルニジピン投与によって24週後には138/81mmHgに有意に低下した。しかし、心拍数には有意な変動は認められなかった。

 腎機能については、24週間のシルニジピン投与によって、eGFRは78mL/min/1.73m2から83mL/min/1.73m2へと有意に上昇していた。一方でUAEは、有意差はないものの16.6mg/gCrから12.5mg/gCrへと低下した。

 また、24週間のシルニジピン投与によりHOMA-IRは、統計学的有意性は認められなかったものの、2.3から1.3へと低下した。一方、尿中8-イソプロスタンは236pg/mLから182.2pg/mLに有意に低下していた。

 さらに、尿中8-イソプロスタン、eGFR、収縮期/拡張期血圧の変化量の関連性を調べたところ、3つのパラメータ間には有意な相関は認められなかった。
 
 村上氏は、N型Caチャネル阻害薬であるシルニジピンの投与によって酸化ストレスの指標である尿中8-イソプロスタンが低下したことから、本態性高血圧症患者の酸化ストレスの亢進に交感神経系が関与している可能性を指摘した。また、尿中8-イソプロスタンと血圧の変化量には関連性が認められなかったことから、シルニジピンによる酸化ストレス軽減作用は、降圧効果とは独立しており、交感神経の抑制を介したものである可能性が考えられると考察している。

(山岸倫也=メディカルライター)