福島県立医大の横川博英氏

 降圧目標の達成率は、糖尿病や腎障害患者あるいはこうした基礎疾患のない65歳未満の患者で低いことが報告された。約3000人を対象としたコホート研究FRESHFukushima Research of Hypertension)で明らかになったもので、福島県立医大横川博英氏(写真)らが10月10日、札幌市で開催されている日本高血圧学会で発表した。

 コホート研究FRESHは、高血圧治療ガイドライン(JSH2004)が示した降圧目標値をどれだけ達成しているかを通年で評価したもの。福島高血圧研究会の会員医師72人が参加し、2006年7月から2007年5月まで、会員医師の外来に通院している高血圧患者を対象に行われた。登録患者は、3カ月以上、降圧薬の処方を受けている3358人。登録時には、基本属性、身体測定値、家族歴、診療情報などを把握した。その後の追跡調査では、3カ月ごとに高血圧診療に関する情報を収集し、1年間で計3回実施した。

 追跡調査では38人がデータ欠損などで除外され、最終的に1年間追跡できたのは2743人(追跡率82.6%)だった。患者背景としては、年齢の中央値が72歳(24-99)、男性45%で女性55%だった。30%が糖尿病を、44%が脂質代謝異常をそれぞれ合併していた。またベースラインでの収縮期血圧と拡張期血圧は中央値が134mmHgと76mmHgだった。

 JSH2004に基づき、糖尿病あるいは腎障害患者群、糖尿病および腎障害を合併しない若年・中高年群、糖尿病および腎障害を合併しない高齢者群の3群に分け、それぞれの降圧目標値の達成率を求めた。

 その結果、3回の追跡調査すべてで目標値を達成した割合とすべて未達成だった割合は、糖尿病あるいは腎障害患者群で4%と46%、糖尿病および腎障害を合併しない若年・中高年群で4%と43%、糖尿病および腎障害を合併しない高齢者群で31%と9%という成績だった。

 さらに、多変量解析ですべて未達成になる要因を検討したところ、各群で以下の特徴がみられた。

 糖尿病あるいは腎障害患者群では、高血圧の家族歴がある(オッズ比1.4)、飲酒の習慣がある(同1.6)、喫煙の習慣がある(同1.5)、家庭血圧の指導がある(同1.4)、脂質代謝異常がある(同1.4)などだった。

 糖尿病および腎障害を合併しない若年・中高年群では、BMI25以上(オッズ比2.1)、男性(同0.6)、臓器・血管障害がある(同0.5)だった。男性および臓器・血管障害があることは、予防的因子だった。

 糖尿病および腎障害を合併しない高齢者群では、降圧薬2種類(オッズ比2.1)、降圧薬3種類以上(同4.5)などが浮かび上がった。また、臓器・血管障害があることはやはり予防的因子(同0.6)だった。

 横川氏らは、FRESHは地域での高血圧患者の降圧目標達成率を通年で明らかにした日本初のコホート試験である意義を強調。糖尿病あるいは腎障害患者群、糖尿病および腎障害を合併しない若年・中高年群で、通年達成率が低かったと結論した。また、未達成となる要因解析を踏まえ、生活習慣の見直しと適切な体重管理、さらに家族歴の評価が、高血圧診療の向上に重要であると考察した。一方、動脈硬化関連の合併症の発見が厳格な血圧管理のきっかけになっていると推察。こうした合併症の発症前から、血圧管理の向上を図るべきとも指摘した。