味の素株式会社医薬カンパニー医薬研究所の有冨静氏

 N型Caチャネルとレニン・アンジオテンシン・アルドステロン(RAA)系との関連性、そして高血圧の病態に及ぼす影響についての研究が進められてきている。味の素株式会社医薬カンパニー医薬研究所の有冨静氏(写真)は、N型Caチャネルノックアウト(KO)マウスを用いた検討を行い、アンジオテンシンII(AII)による腎障害にはN型Caチャネルが関与していることを、第31回日本高血圧学会総会の一般口演において報告した。N型Caチャネルの遮断は、腎機能を保護する上で重要であることを示唆する新たな知見である。

 AIIは昇圧の主要因子であるだけでなく、extracellular signal-regulated kinase(ERK)のリン酸化を介して腎機能を増悪させるが、その作用機序として上皮・間葉転換(EMT)の亢進が指摘されている。EMTの亢進はERKのリン酸化、結合組織増殖因子(CTGF)の増加によって引き起こされるが、Heme Oxygenase-1(HO-1)はERKのリン酸化を抑制して腎保護作用を示すことも報告されている。

 今回、有冨氏は、N型CaチャネルのAIIとの関連性を明らかにするために、N型CaチャネルKOマウスを用いて、AIIによる腎障害の程度を評価し、EMTの指標となる蛋白群の発現状況について検討した。

 7〜9週齢の野生型およびN型CaチャネルKOマウスにAIIあるいは生理食塩水を4週間持続投与し、投与前後で収縮期血圧をテールカフ法で測定した。また、4週間経過後に採尿、採血および腎組織の採取を行い、腎機能に関連する生化学パラメータおよび腎組織学的所見を評価した。

 まず、AIIによる収縮期血圧の上昇は、野生型マウスでもN型CaチャネルKOマウスでも同様に認められたことから、N型Caチャネルの遮断はAIIによる昇圧には影響を及ぼさないことが示された。

 しかし、AIIによる尿中アルブミン排泄量の上昇、糸球体体積の上昇はN型CaチャネルKOマウスでは抑制されたことから、N型Caチャネルを遮断することで、AIIによる腎障害の進展を抑制できることが示された。

 組織学的にはAIIは糸球体肥大、線維化を亢進させα平滑筋アクチン(α-SMA)の発現量を亢進させるが、N型CaチャネルをKOすると、AIIによるα-SMAの発現は完全に抑制された。

 また、N型CaチャネルKOマウスでは、α-SMAの発現を調節するCTGFのAIIによる上昇が抑制されること、AII刺激の有無にかかわらずERKのリン酸化レベルが低下し、腎保護作用の指標であるHO-1 mRNAの発現量が上昇することが明らかとなった。

 このように、N型CaチャネルKOマウスではAII惹起性の昇圧反応には影響を及ぼさずに、AII惹起性の腎障害を抑制できることから、N型CaチャネルはAII惹起性の昇圧とは異なる機序を介して、AII惹起性の腎障害の進展に関与する可能性が示唆された。

 最後に有冨氏は、N型CaチャネルKOマウスでは、EMTの指標となる蛋白群の発現拡大が認められなかったことから、N型CaチャネルがERKのリン酸化を介したAII惹起性のEMT亢進に関与している可能性を指摘して講演を締めくくった。

(山岸倫也=メディカルライター)