心臓血管研究所循環器科の永島和幸氏

 141例の高血圧患者に対し、L/N型Caチャネル拮抗薬であるシルニジピンを用いて降圧治療を続けてきた心臓血管研究所循環器科の永島和幸氏らは、5年間にわたる患者の交感神経活動変化を解析した結果について日本高血圧学会のポスターセッションで報告。シルニジピンによる交感神経抑制は、特に合併症のない患者に対して良好であり、一次予防の観点から推奨されるべき薬剤だとの見解を示した。

 高血圧は心血管疾患の最大の危険因子であり、その誘発機序には心臓迷走神経機能障害に伴う交感神経活性亢進の関与が推測されている。永島氏らは、高血圧治療のためにシルニジピンを投与した虚血性心疾患合併高血圧患者66例(I群)と非合併高血圧患者51例(N群)について、投与前ならびに投与後1年ごとに5年間、24時間心電図を測定し、その心拍変動スペクトル解析から交感神経活性の指標であるLF/HF(低周波成分/高周波成分比)を求めた。なお、自律神経活動の急激な変化は起床時に多くみられることから、全日のデータ解析と併せて、起床時のデータのみを抽出した解析も行った。

 I群ではN群に比して多くの患者がアンジオテンシンII受容体拮抗薬ARB)の併用を要した(48.5% vs 21.6%、p<0.05)が、両群の5年間の平均血圧は全日・起床時とも同等であった。また、ベースライン時の全日LF/HF値も両群同等であり、5年の間に有意な変動をきたすこともなかった。

 しかし、起床時のLF/HF値はベースライン時からすでにI群のほうが高い傾向にあり(1.55 vs 1.43、p<0.06)、その差は5年後にはさらに拡大した(0.87%増 vs 0.71%減、p<0.001)。また、I群のうち10例が追跡期間中に血行再建術の再施行を要したのに対し、N群では心血管合併症の発症は皆無であった。

 以上のように、シルニジピンは交感神経系への影響が少なく、心血管疾患の合併のない高血圧患者については5年の間に交感神経活性のわずかな亢進も認めず、心疾患の合併を抑制した。一方、既に心血管疾患を合併した患者では、非合併例に比べ交感神経活性が亢進していることが示された。永島氏は、「心血管合併症一次予防の観点からは、降圧とともに自律神経系への影響を考えた降圧薬を選択し、早期から交感神経活性の抑制を図ることが重要だと考えられる」と述べていた。