東北大21世紀COEプログラム医薬開発統括学術分野 創生と人材育成拠点 CRESCENDOの井上隆輔氏

 脈圧の上昇と心血管イベントの関連性は強いとされるが、循環器予後の予測能に優れるとされる家庭血圧測定で得た脈圧値と脳卒中発症の関連性は比較的弱いことが報告された。家庭血圧測定に基づく脈圧と脳卒中発症との関連性を調べた研究成果の報告はこれが初めてという。大迫研究の一環で、東北大21世紀COEプログラム医薬開発統括学術分野 創生と人材育成拠点 CRESCENDOの井上隆輔氏が10月25日の、日本高血圧学会の一般口演「疫学:脳血管障害・突然死」セッションで発表した。

 対象は、岩手県花巻市大迫町で家庭血圧測定に参加した35歳以上の住民のうち、脳卒中と一過性脳虚血発作TIA)既往のない2644人(男性1070人、平均58.6歳)。対象者のうち21.1%に喫煙歴、27.4%に降圧薬内服歴があった。また、8.9%に糖尿病、26.0%に高脂血症、0.6%に心疾患の既往があった。

 平均9.3年の観察期間中、186人が脳卒中を発症した。内訳は脳梗塞が127人、脳出血が49人、TIAが7人だった。

 研究グループは、Cox比例ハザードモデルを用いて、血圧因子の1SD上昇ごとの相対ハザードを比較した。その結果、全脳卒中における相対ハザードは、収縮期血圧1.48(95%信頼区間は1.27-1.73)、拡張期血圧1.33(1.14-1.55)、平均血圧1.44(1.23-1.68)、脈圧1.31(1.13-1.51)で、収縮期血圧が高く、脈圧が低かった。同様に脳梗塞では、収縮期血圧1.41(1.18-1.72)、拡張期血圧1.25(1.03-1.50)、平均血圧1.35(1.12-1.64)、脈圧1.31(1.11-1.55)で、収縮期血圧が高く、拡張期血圧が低かった。出血性脳卒中では、収縮期血圧で1.49(1.09-2.03)、拡張期血圧で1.47(1.08-2.03)、平均血圧で1.53(1.12-2.08)、脈圧で1.20(0.90-1.61)と、脈圧だけは有意なイベント予測能を示さなかった。

 こうした結果から井上氏は、家庭血圧測定で得られた血圧値では、脈圧の脳卒中予測能は比較的劣っており、一方で収縮期血圧は脳出血、脳梗塞、他の病型を含む全脳卒中のいずれでも高い予測能を示したと結論付けていた。

 本報告に対してフロアからは、高齢者においては脈圧がリスク要因になるという研究報告があるのではないか、という指摘があった。井上氏は、「我々は、70歳以上で自由行動下血圧の脈圧が収縮期血圧を上回る予測能を持っていることを既に示しており、今回もデータを提示していないが、死亡については家庭血圧の脈圧がリスクになるという結果を得ている。このため、高齢者においては、家庭血圧における脈圧も無視してはならないと考える」としていた。