東京女子医科大学第四内科の市川明子氏

 近年は透析人口の増加に伴い、その予備軍たる慢性腎臓病CKD)の早期治療の重要性が指摘されている。Ca拮抗薬であるシルニジピンは、輸入細動脈と輸出細動脈の双方を拡張することにより優れた腎保護作用を発揮する。その機序としては、L型Caチャネルに加えて交感神経終末のN型Caチャネルをも阻害するシルニジピンの特異な作用が関係するものと推測されているが、まだ不明な点も多い。東京女子医科大学第四内科の市川明子氏らは、ラット腎臓におけるN型Caチャネルの局在と機能について検討した結果、同チャネルが輸入・輸出細動脈双方に存在することを確認。さらに、その発現が交感神経活性による調節下にあるとの可能性を見出した。研究成果は10月25日のポスターセッションで報告した。

 市川氏らはまず、Wistarラット(WKY)の腎臓から糸球体を単離し、輸出細動脈と輸入細動脈におけるL型・N型Caチャネルと交感神経の発現分布を蛍光抗体法にて比較した。

 その結果、L型Caチャネルの発現は輸入細動脈にのみに認められた一方、N型Caチャネルは輸入・輸出細動脈双方に発現が認められた。また、血管平滑筋周囲には交感神経の発現も認められたが、N型Caチャネルの局在との一致は明らかでなかった。

 続いて同氏らは、加齢とともに交感神経活性の亢進を呈する高血圧自然発症ラット(SHR)におけるN型Caチャネルの発現強度をWKYと比較した。その結果、12週齢のSHRではWKYに比して著明なN型Caチャネル発現の増強を認めた。両者の発現強度の差は、除神経処理を施しても変わりなかった。

 以上より、N型Caチャネルは腎糸球体の輸入・輸出細動脈の双方の平滑筋に存在することが確認された。すなわち、N型チャネルのブロック作用を有するシルニジピンは、輸入細動脈と輸出細動脈双方の拡張をもたらすことにより、糸球体高血圧を緩和し、腎保護作用を発揮するものと推測された。

 さらに今回の検討では、N型Caチャネルの発現は交感神経活性の程度により調節されている可能性が示唆された。CKD患者では交感神経活性の亢進を呈することが知られているが、今回示唆されたように、交感神経の活性化に伴いN型Caチャネルの発現が増強するのだとすれば、これを抑制するシルニジピンの作用は、CKD治療において従来のL型Ca拮抗薬にないアドバンテージを生むことも期待できよう。