東北大学の小池智幸氏

 日本消化器病学会が2009年に発表した胃食道逆流症GERD)診療ガイドライン(GERD-GL)には、診断と治療の手順がフローチャートで示され、GERDの第1選択薬にはプロトンポンプ阻害薬Proton pump inhibitorPPI)が推奨されている。そのフローチャートに準じて、GERD診療のエキスパートである消化器内視鏡医が、PPIの1つであるラベプラゾールの通常用量による治療を行った場合、GERD患者の約7割で症状が改善されることが報告された。第98回日本消化器病学会(4月19〜21日、東京)最終日のワークショップで、東北大学の小池智幸氏らが発表した。

 小池氏らは2010年1〜12月、宮城県仙台市内12施設(5病院、7クリニック)の消化器内視鏡医と共同で、GERDが疑われた患者連続211例にGERD-GLのフローチャートに準じた診療を実施した。処方薬はラベプラゾールに統一し、初期投与量を10mg/日に設定、症状の改善を得られない症例では20mg/日への増量を可能とした。GERD診断には、Fスケール(Frequency Scale for Symptoms of GERD:FSSG)を用い、スコア8点以上をGERD、8点未満あるいはスコア50%以上の改善を症状改善と定義した。

 全例の診療記録を解析したところ、175例(男性75例、女性100例)で内視鏡検査が先行され、残り36例(男性13例、女性23例))ではPPIテストが先行されていた。内視鏡検査先行群の平均年齢(歳)は53.5±16.9で、PPIテスト先行群の47.0±16.4に比べて有意に高かった(P<0.01)。PPI導入からの平均投与期間は、内視鏡群が36.3±24.0日で、PPIテスト群の25.0±17.4日に比べて有意に長かった(P<0.05)。FSSG平均スコア(点)は16.8±7.3と16.5±7.1で両群に有意差はなかった。

 PPI治療開始後、内視鏡先行群では42例(24.0%)が、PPIテスト先行群では16例(44.4%)がそれぞれ脱落した。残りの内視鏡群133例とPPIテスト群20例のラベプラゾール10mg/日の症状改善率は、全体69.9%(153例中107例)、PPI先行テスト群80.0%(20例中16例)、内視鏡群68.4%(133例中91例)で、有意差はなかったが内視鏡群でやや低い傾向を認めた。内視鏡群では42例が効果不十分、そのうち31例がさらに脱落したが、それらの症例の半数で主治医がラベプラゾールを増量しておらず、その影響が脱落率に反映されたと推察された。残りの11例はラベプラゾール20mg/日に増量され、増量後のFSSDスコアはベースラインの17.6±2.4から8.8±1.6に有意に改善された(P=0.0028)。症状の改善率は45.5%(11例中5例)だった。

 内視鏡群でラベプラゾール10mg/日により改善を得た91例は、長期管理に移行した。PPI維持療法への移行例が75.8%(69例)、症状再発時に必要に応じて服薬するオン・デマンド療法への移行例が12.1%(11例)、治療薬の減量あるいは中止が12.1%(11例)だった。その後の経過を評価し得た患者の寛解維持率は、PPI維持療法群では91.7%(24例中22例)だったが、オン・デマンド療法群では71.4%(7例中5例)で両群で有意差はなかった。

 最終的に、症状改善を得てラベプラゾール中止に至った症例の割合は全体で9.2%(14例)、PPIテスト群15%(20例中3例)、内視鏡群8.3%(133例中11例)だった。内視鏡群でラベプラゾール10mg/日により改善を得た91例と、20mg増量で改善を得た5例を合わせた96例の長期管理における脱落率は5.2%にとどまった。

 一方、小池氏らは2011年7〜10月に自施設でPPI療法施行中のGERD患者連続135例を対象に、GerdQ問診票を用いて症状の残存率を調査している。GerdQ問診票では、胸やけ、逆流、逆流に伴う睡眠障害、逆流に対する内服胃腸薬の追加服用などが週2日以上認められた場合に治療効果不十分と判定される。

 検討の結果、治療効果不十分例は全体で23.7%(32例)、びらん性GERD例では22.0%、NERD例では24.0%だった。さらに、週1回以上の胸やけ症状を55例(40.7%)に認め、症状の残存が多いことが示唆された。そこで、治療効果不十分例の背景を解析したところ、平均年齢が奏効例の65.0歳に比べ不十分例では58.5歳と有意に若く(P<0.035)、PPIの2〜4倍量の服用者の割合が奏効例の12.6%(13例)に対し、不十分例では53.1%(17例)と有意に高かった(P<0.0001)。

 小池氏は以上2つの検討結果を踏まえ「本検討は、内視鏡医による検討であったため、内視鏡検査によるGERD診断が確実なPPI投与につながることが示唆された。その結果、ラベプラゾール10mg/日の投与により、約7割の症例で症状が改善された。しかし専門医がGERD-GLのフローチャートに準じた診療を実施したにもかかわらず、寛解を得てラベプラゾール中止に至った症例は9.2%にとどまり、症状残存や脱落例も少なくなかった」と総括するとともに課題も提起した。

(日経メディカル別冊編集)