東北大学消化器病態学の菅野武氏

 大規模災害は、ストレスと消化性潰瘍の関連を検証する貴重な機会と考え、東日本大震災被災地域について調査を行ったところ、震災後は前年と比べて出血性潰瘍患者が有意に増加し、中でもH.Pylori陰性でNSAIDsも内服していない出血性潰瘍患者の割合が増加していることが、東北大学消化器病態学の菅野武氏らの研究で明らかになった。4月19日から21日まで東京で開催された第98回日本消化器病学会(JSGE)で発表された。

 対象は、宮城県内基幹7病院において震災発生直後(2011年3月11日)から3カ月間に新たに胃十二指腸潰瘍と診断された383人(2011年群)と、2010年同時期に胃十二指腸潰瘍と診断された261人(2010年群)。年齢、性別、潰瘍の数、H.Pylori感染の有無、アスピリン/NSAIDs服用の有無について調べた。

 その結果、上部消化管内視鏡の総実施数は2010年群が6533人、2011年群が5625人で震災後の方が少なかった。しかし、出血性潰瘍は2010年群で119人(45.6%)に対し、2011年群では257人(67.1%)と有意に増加していた(P<0.0001)。

 また、2010年群と2011年群の胃十二指腸潰瘍の患者について、H.Pylori感染の有無とNSAIDs内服の有無によってそれぞれ4群に分類したところ、H.Pyloriに感染しておらずNSAIDsを内服していない非H.Pylori・非NSAIDs潰瘍の患者が、2010年群(13.1%)に対して2011年群(23.5%)で有意に増加していた(P<0.02)。

 2011年群の非H.Pylori・非NSAIDs潰瘍の患者の平均年齢は70.1歳で、それ以外の患者(H.Pyloriに感染and/or NSAIDs内服、64.4歳)に比べて高齢だった(P<0.02)。

 菅野氏は、「震災後は出血性潰瘍の患者が前年より有意に増加しており、中でも非H.Pylori・非NSAIDs潰瘍の割合が増加していることが分かった。大規模な災害の後には、ストレス単独でも潰瘍発生の因子となり得る可能性が示唆された」と話した。

(日経メディカル別冊編集)