島根大学の石原俊治氏

 肺炎副鼻腔炎など、気道粘膜疾患に深く関わっている好酸球が、消化管疾患の原因にもなるとして注目されつつある。欧米ではすでに増加が報告されている好酸球性消化管疾患について、日本での発生状況が全国調査により初めて明らかにされた。4月19日から東京で開催中の第98回日本消化器病学会(JSGE2012)で、島根大学の石原俊治氏らが報告した。

 好酸球性消化管疾患は、好酸球性食道炎と好酸球性胃腸炎に大別される。好酸球性食道炎の主訴は胸やけや胸のつかえ感などで、類似した症状を呈する逆流性食道炎との鑑別が難しい。また腹痛や下痢など、多くの消化管疾患に共通する症状を呈する好酸球性胃腸炎も、過敏性腸症候群(IBS)、炎症性腸疾患(IBD)、コラーゲン形成大腸炎(Collagenous colitis)、感染症などとの鑑別で苦慮することが多い。

 好酸球性食道炎の有病率は、スイスでは1989年に10万人当たり2人と報告され、その後2004年の調査では、10万人当たり23人に増加していた。米国でも、2006年に10万人当たり55人と報告され、現在も増加傾向にあることが示唆されている。2010年の欧米におけるアカラシアの発症頻度は10万人当たり1人と報告されているため、好酸球性食道炎の有病率は決して低いとは言えない。日本における好酸球性食道炎の報告は、島根大学が2006年に論文発表した1症例が初出とみられている。

 一方、好酸球性胃腸炎についてはその存在は認められながらも、国内外で実態は十分に明らかにされていない現状にある。

 好酸球性食道炎・胃腸炎の最大の問題点は、頻度が不明であり、診断基準が明確になっておらず、治療法も確立されていないことにある。そうした現状を踏まえ、石原氏らは厚生労働省の事業として「成人の好酸球性食道炎/好酸球性胃腸炎調査研究班」(班長:木下芳一氏、島根大学)を組織し、全国調査を実施した。その結果、全国から提供された臨床データから、好酸球性食道炎26例および好酸球性胃腸炎144例が抽出され、解析された。

 好酸球性食道炎26例では、8割が男性(20例)で、平均年齢49±3歳、44%が何らかのアレルギー疾患を合併し、22%が喘息を合併していた。初期症状は嚥下障害が最も多く60%に認めた。CT検査では64%に食道壁の著明な肥厚があった。30%に末梢血中の好酸球増多を認めた。有症状症例で実施された生検でも、好酸球の浸潤を認めた。

 また食道内視鏡像の多くに、縦走溝(35%)、白斑(23%)、輪状の狭小化(19%)が観察されたが、内視鏡的異常を認めない症例も42%存在した。そのため、内視鏡検査だけでは好酸球性食道炎を見逃す可能性も示唆された。

 石原氏はこれらの結果をもとに好酸球性食道炎の診断指針を立案し、嚥下障害やつかえ感などの症状の存在と、生検組織における好酸球の浸潤を必須項目とし、内視鏡像における病変、CTまたは超音波内視鏡による食道壁肥厚、末梢血中の好酸球増多、ステロイドの有効性を補助項目とした。治療指針案では、ステロイドの投与を推奨した。

 一方の好酸球性胃腸炎144例(男性78例、女性66例)では性差を認めなかった。平均年齢は46±2歳、アレルギー疾患の有病率は46%だった。下痢を54%に、腹痛を53%に、胸痛を15%に認めた。病変の部位別では、小腸が72%と最も多く、大腸42%、胃31%だった。内視鏡像では、びらん(43%)、浮腫(42%)、発赤(38%)のいずれかまたは併存が特徴だったが、無症状も11%存在した。

 好酸球数は4795±613/μLで、食道炎に比べて圧倒的に多かった。好酸球性胃腸炎の診断指針案では、腹痛、下痢、嘔吐等の症状の存在、生検組織における好酸球の浸潤、腹水中の好酸球の増多を必須項目とし、末梢血中の好酸球の増多、喘息等のアレルギー疾患の病歴、内視鏡像による浮腫、びらん、発赤およびCT画像による胃・腸壁の肥厚、ステロイドの有効性を補助項目とした。治療指針では、やはりステロイドを推奨した。

 石原氏は最後に「今回の調査では、慢性的に再燃を繰り返し、ステロイドでは改善できない難治例も一部で報告された。今後は、そうした症例に対する治療法も確立する必要がある」とし、次の課題に挙げた。

(日経メディカル別冊編集)