札幌厚生病院の黒河聖氏

 抗血小板療法に用いる低用量アスピリン鎮痛治療に用いる非ステロイド性抗炎症薬NSAIDs)が胃や十二指腸の潰瘍のみならず、小腸粘膜傷害も誘発することが指摘されている。胃潰瘍などの胃粘膜病変の治療薬として汎用されているレバミピドが、この薬剤起因性の小腸粘膜傷害の改善にも寄与することが報告された。4月19日に東京で開幕した第98回日本消化器病学会(JSGE2012)で、札幌厚生病院の黒河聖氏らが発表した。

 レバミピドは胃炎や胃潰瘍の治療薬として知られ、その成分は角膜・結膜や消化管壁をはじめとする生体内の粘膜に存在するムチンを増加させ、粘膜を修復するとされる。黒河氏らは、レバミピドがNSAIDsによる小腸粘膜傷害を予防することが健常成人において確認されながら、実際の患者を対象とする検討が十分になされていないことに着目し、北海道の小腸研究会でNSAIDsと低用量アスピリンによる小腸粘膜傷害に対するレバミピドの改善効果を検討した。

 試験デザインは、多施設共同プラセボ対照無作為化二重盲検比較試験。対象は、NSAIDsあるいは低用量アスピリンの使用により小腸粘膜傷害(粘膜欠損、点状出血、発赤、びらん、潰瘍)を発症した患者61人。なお、対象からは活動性の出血等の治療を要する症例は除外された。

 対象をプラセボ投与群30例とレバミピド100mg×3/日投与群31例に無作為に割り付けし、投与開始時と投与4週間後に、カプセル内視鏡により小腸粘膜傷害を評価し、両群の変化量(Delta number)を比較した。同じく投与開始時と投与4週間後に採血を行い、栄養指標として血清総蛋白値とヘモグロビン値も評価した。

 両群間において、年齢、性差、使用薬剤、ヘモグロビン値、総蛋白、小腸粘膜傷害の種類、程度などで差はなかった。

 検討の結果、びらんの変化量はレバミピド群では−2.5±3.4となり、プラセボ群の2.1±3.9に対して絶対値差分(Absolute difference:A.D.)が−4.6(95%信頼区間:−6.5〜−2.7、P<0.0001)の有意な改善が示された。潰瘍の変化量も、レバミピド群では−0.5±1.6で、プラセボ群の0.1±0.7に対して−0.6(95%信頼区間:−1.4〜−0.1、P=0.0245)の有意な改善が示された。

 栄養指標の変化では、血清総蛋白(g/dL)はプラセボ群ではベースラインから−0.27±0.34の減少が示されたが、レバミピド群では0.06±0.36と減少を認めず、両群間にはA.D.0.34(95%信頼区間:0.15〜0.52、P=0.0005)の有意な差を認めた。一方、ヘモグロビン値(g/dL)は、プラセボ群で−0.61±1.58、レバミピド群で0.01±0.86の変化をそれぞれ認め、両群間のA.D.は0.62(95%信頼区間:−0.04〜1.28、P=0.0660)で有意差はなかったが、レバミピド群で減少が抑制される傾向を認めた。

 本検討において、レバミピドはNSAIDsや低用量アスピリンの使用に起因する小腸粘膜傷害を改善するとともに、栄養障害も改善する可能性が示唆された。黒河氏はこれらの結果を踏まえ、「小腸傷害によって、小腸での吸収が抑制され総蛋白の減少が起こったと考えられる」とした。その上で、レバミピドの小腸傷害の抑制メカニズムの1つとして、北海道大学の研究グループからレバミピドが低用量アスピリンによる小腸の血流低下を予防することもすでに報告されていることから、「レバミピドは、NSAIDsあるいは低用量アスピリンの長期使用者における、有用な併用薬になるのではないか」と総括した。

(日経メディカル別冊編集)